自然災害債務整理ガイドラインの内容
弁護士の佐藤です。
先日、このブログで、静岡県弁護士会に、自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)の支援専門家の登録申請をした旨お話したのですが、無事、承認をいただきました。
そこで、前回もこの制度について簡単にお話したのですが、今回もう少し具体的にこの制度についてお話したいと思います。
まず、自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)は、2016年4月1日より、運用が開始されました。
この制度は、2015年9月2日以降に災害救助法が適用された自然災害の影響により、従前の住宅ローン等の支払が困難となった被災者について、一定の要件のもとに、住宅ローン等の債務の減額や免除が認められるものです。
例えば、自然災害に遭い、住宅ローンの返済期間中、自宅が全壊したという場合、住宅ローンは当然免除されるわけではなく、免除を受けるためには、自己破産を受けるしかありませんでした。
しかし、この制度ができたことにより、以下の点で、自己破産をするより、メリットがあります。
- 自己破産の場合、いわゆるブラックリストに載り、当面、借り入れができなくなるのに対し、この制度を利用すれば、ブラックリストに載ることはありません。
- 次に、自己破産の場合でも一定の財産を手元に残すことはできるものの、その限度は、原則99万円までであるのに対し、この制度は、最大500万円の現預金、家財火災保険金最大250万円、被災者生活再建支援金、災害弔慰金・災害障害見舞金、義援金といった財産を手元に残せます。
- そして、自己破産の場合、保証人がついていれば、債権者は保証人に請求することになるのに対し、この制度の場合は、原則として、保証人への支払請求がなされません。
すなわち、この制度は、自己破産の特例のような位置づけといってもよいのか思います。
そして、この制度の流れですが、
- まず、被災者がメイバンク(借入の元金総額が最大の金融機関)にこの制度を利用することを申し出ていただきます。
- そして、メインバンクが手続着手に同意をします(この制度を利用できないことが明らかな場合を除き、申し込みから10営業日以内にメインバンクから同意書が発行)。
- そして、被災者が弁護士会に、支援弁護士の依頼をすることで、支援弁護士とともに、手続をすすめ、最終的に特定調停という裁判所での手続きを経て、調停条項を確定し、条項のとおり弁済をする。
ということになります。
この支援弁護士の費用は、被災者に負担していただくことはありません。
というわけで、本日は自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)に関する具体的なお話でございました。
令和2年7月の閣議決定により、このガイドラインが改正され、大規模災害だけでなく、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた個人にも適用される見通しとなったことに加え、毎年おこる大災害や、いつくるかわからない南海トラフ地震に対して、弁護士として、今後とも法や制度の理解を深めていきたいと思います。
では、今週も気合いをいれて頑張ります。