飯田橋事件

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弁護士の佐藤です。

 

今週もはじまりました。

 

さて、前回から凶器準備集合罪についての判例をみてきていまして、前回は、飯田橋事件をご紹介しました。

上記事件は、プラカードの凶器性が問題となりましたが、上記事件にはさらに争点があり、共同加害の目的というものです。

この点、控訴審は、共同加害の目的について、

  1. 前示一月一四日夜のA大学での集会、集団示威運動において、学生らが昂揚した気分になつていたことは認められるが、集会等で学生らが口にする言葉は必要以上に激しいものがあり、その威勢のいい言葉が必ずしもそのまま現実となることを意味するものではないから、指導者の「いかなる警察権力に対しても闘い抜こう」との意見表明に対し学生らが賛意を表したからといつて、そのことは、抽象的観念的にせよ、学生らの共同加害意思を推認させる事実とみることはできない。
  2. 学生らの所持した「角材の柄付きプラカード」が、柄の部分の角材を闘争などの際に使用する意図のもとに、全体としてはプラカード様に偽装されたものという疑いがないわけではないが、このことは、学生らがこのプラカードを佐世保まで携行して佐世保で使うつもりであつたことが関係証拠によつて明白である以上、佐世保に到着する以前においても、もし警察側の実力行使があれば、警察側に対し有形力を行使してこれを排除する意図を有していたと当然推認させるものとはなし得ない。
  3. 学生らによつて用意された石塊が、飯田橋駅付近に出動し待機している警察官に対し投石するために、集団としてその全体の意思に基づいて用意されたものであつたとすれば、右の警察官に出会う以前に放棄されるはずがなく、またダンボール箱に詰めて運搬するよりは集団員各自に分散携行させるのが自然であり、右の事実もまた飯田橋駅付近に待機している警察官に対する学生集団の共同加害目的の存在を推認させるものとしては不十分である。
  4. 学生らの間で、飯田橋駅付近に出動している警察官の警備に対処するための特段の意思統一はなかつた。として、学生集団の一部の者が阻止線を形成する警察官に対して加えた暴行は、ひそかに待機していた警察官によつて突如阻止線が設けられ、学生集団の進路が完全に遮断されたことから生じた各自の偶発的行為というべきであつて、学生集団の間に共同加害目的を認定することができないというのである。

として、共同加害の目的を否定しました。

これに対し、最高裁判所昭和52年5月6日判決は、

 

「兇器準備集合罪が成立するためには、二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して加害行為を実行しようとする目的をもつて兇器を準備し集合したことをもつて足り、集合者の全員又はその大多数の者の集団意思としての共同加害目的を必要とするものではないと解されるところ、原判決も、A大学での集会あるいは集団示威運動において、これに参加した約二〇〇名の学生が、指導者の『……いかなる警察権力に対しても闘い抜こう』との呼びかけに応じ昂揚した気分にあつたこと、本件『角材の柄付きプラカード』は柄の部分の角材を闘争などの際に使用する意図のもとに、全体としてはプラカード様に偽装されたものと疑われるふしがあること、学生らがA大学を出発するに先だつて石塊等を準備したことはいずれもこれを肯定しているところであるから、これらの情況は学生集団の潜在的加害意思を認めるに十分であるうえに、現実に、学生集団の先頭部分に位置していた一部の学生が、所携の『角材の柄付きプラカード』あるいは角材を振り上げて阻止線を形成している警察官をめがけて殴りかかつている事実を考え合わせると、学生集団の構成員の間に、警祭官に対する暴行につき、明示の統一した意思連絡がなかつたとしても、その先頭部分にいた学生らが警察官に対し『角材の柄付きプラカード』等を振り上げて加害行為に出た時点以後においては、これらの行動を相互に目撃し得る場所に近接して位置していた学生らのうち、少くとも、直接警察官に対し暴行に及んだ者あるいは『角材の柄付きプラカード』等を振り上げて暴行に及ぼうとした学生らは、特段の事情がない限り、漸次波及的に警察官に対する共同加害意思を有するに至つたものと認定するのが相当である。ところで、被告人らは、いずれも学生集団の先頭部分に位置し、直接警察官に対し暴行に及び、あるいは『角材の柄つきプラカード』又は角材を振り上げていたことは原判決も認定するところであるから、右に判示したところに照らし、被告人らは阻止線を形成していた警察官に対し共同加害意思を有するに至つたと認められる疑いが極めて濃厚であるにもかかわらず、これを否定すべき特段の事情についてなんら説明しないまま、被告人らを含む先頭部分の学生集団の学生らの行為は銘銘の個人的な意思発動による偶発的行為にすぎず、これら学生らの間に共同加害目的の存在を認めることはできないとして、被告人らに対し兇器準備集合罪が成立しないとした原判決は、経験則に違反して事実を誤認した疑いがあるものというべく、これが判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。」

とし、共同加害の目的を認め、控訴審とは異なる判断を示しました。

 

現在は、なかなかこの手の罪名が問題となることもなく、イメージがわきにくいところですが、主観的要件については、状況証拠から判断するほかないものといえます。

 

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