非嫡出子相続分規定事件

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弁護士の佐藤です。

 

どんより、若干肌寒い水曜日でございます。

 

雨が降るかどうか微妙な天気の日は、だいたい私が外出すると雨が降り始めます。

 

で、本日も前回に続き、憲法14条に関する判例を。

 

本日ご紹介する判例は平成25年の最高裁判決でご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 

非嫡出子相続分規定事件というものです。

 

これは、非嫡出子、つまり婚外子の相続分が嫡出子の2分の1の法定相続分しか認めない民法900条4号但書の規定が憲法14条に反し違憲ではないかという事案です。

 

この問題は以前から争われてきて、平成7年7月5日の最高裁は、民法が法律婚主義を採用している以上、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図った右規定の立法理由には合理的根拠があり、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1としたことが右立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものとは言えず、憲法14条1項に反しないと判示していました。

 

ただし、この決定には、最高裁の5人の裁判官が反対意見をだしており、学説からも強い批判がありました。

 

 

そして、ついに、平成25年9月4日、最高裁は、上記決定を変更し、

 

「昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向,我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘、嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化、更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。」

 

とし、

「以上を総合すれば、遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。したがって,本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである。」

 

と判断したのです。

 

 

ここで注目すべきは、その違憲となっていたのは,「平成13年7月」であるとしていることです。

 

では、平成13年7月からこの判決が出されるまでの間になされた遺産分割等はどうなるのでしょうか。

 

この点に関し、最高裁は、

「本決定は、本件規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断するものであり、平成7年大法廷決定並びに前記3(3)キの小法廷判決及び小法廷決定が、それより前に相続が開始した事件についてその相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。」

 

とし  

「他方、憲法に違反する法律は原則として無効であり、その法律に基づいてされた行為の効力も否定されるべきものであることからすると、本件規定は,本決定により遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断される以上、本決定の先例としての事実上の拘束性により、上記当時以降は無効であることとなり、また、本件規定に基づいてされた裁判や合意の効力等も否定されることになろう。しかしながら、本件規定は,国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し、相続という日常的な現象を規律する規定であって、平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると、その間に、本件規定の合憲性を前提として、多くの遺産の分割が行われ、更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。取り分け、本決定の違憲判断は、長期にわたる社会状況の変化に照らし、本件規定がその合理性を失ったことを理由として、その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず、本決定の違憲判断が、先例としての事実上の拘束性という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し、いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく法的安定性を害することになる。法的安定性は法に内在する普遍的な要請であり、当裁判所の違憲判断も、その先例としての事実上の拘束性を限定し、法的安定性の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず、このことは、裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる」

 

としました。

 

そして、「以上の観点からすると、既に関係者間において裁判、合意等により確定的なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが、関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば、本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当であるといえる。そして、相続の開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については、債務者から支払を受け,又は債権者に弁済をするに当たり、法定相続分に関する規定の適用が問題となり得るものであるから、相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的なものとなったとみることは相当ではなく、その後の関係者間での裁判の終局、明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて、法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当である。したがって、本決定の違憲判断は、Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき、本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。」

 

としたのです。

 

つまり、平成13年7月以降になされた、非嫡出子の相続分を2分の1とした遺産分割等がすべてこの判決によって覆されてしまうとすると、非常に多くの人に遺産分割等のやり直しをさせることになり、法的安定性を著しく害します。

 

そこで、最大決平成25年9月4日は、その点を考慮して、平成13年7月からこの決定までの間に、すでに確定的なものとなっている法律関係には影響を及ぼさないと判示しています。

 

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