都教組事件

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弁護士の佐藤です。

 

さて、本日も憲法28条に関する判例ですが、本日は、都教組事件と呼ばれる事件です。

 

これは、地方公務員法(以下地公法という)37条1項が、「職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人もこのような違法な行為を企て、又は遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない」、と規定し、同法61条4号が、「何人たるを問わず、第37条第1項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者」は3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処すべき旨を規定しているところ、地公法61条4号のように、集団的な違法行為の遂行を共謀し、そそのかし、あおる等の行為(以下あおり行為等という)に対する処罰規定は、刑法典にはないけれども、特別法においては、古くは治安警察法17条、治安維持法3条にみられ、現行法においても、食糧緊急措置令11条、国税犯則取締法22条、破壊活動防止法40条、自衛隊法119条2項にその用例があり、また、その意義については、一般に、違法行為を実行させる目的で、文書、図画、言動により、他人に対し、その実行を決意させ、またはすでに生じている決意を助長させるような勢のある刺激を与えることを指称するものであるとされています。あおりの一般的意義については、右のように一応明らかにされているのですが、地公法61条4号の解釈の場合においては、勤労者の労働基本権を保障した憲法28条との関係から特有な、そして難しい問題がありました。

本件は、勤労者の団体行動権の保障と、公共の立場からする団体行動権の制限との調和をどの点に求めるか、さらに端的にいえば、本件被告人らの行為のように、争議指令の配布、趣旨の伝達等、争議行為に通常随伴する行為を処罰しうるかが問題となりました。

 

この点、最高裁昭和44年4月2日判決は、

 

「地公法三七条、六一条四号の各規定が所論のように憲法に違反するものであるかどうかについてみると、地公法三七条一項には、「職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能力を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又は遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。」と規定し、同法六一条四号には、「何人たるを問わず、第三十七条第一項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者」は三年以下の懲役または一〇万円以下の罰金に処すべき旨を規定している。これらの規定が、文字どおりに、すべての地方公務員の一切の争議行為を禁止し、これらの争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、あおる等の行為(以下、あおり行為等という。)をすべて処罰する趣旨と解すべきものとすれば、それは、前叙の公務員の労働基本権を保障した憲法の趣旨に反し、必要やむをえない限度をこえて争議行為を禁止し、かつ、必要最小限度にとどめなければならないとの要請を無視し、その限度をこえて刑罰の対象としているものとして、これらの規定は、いずれも、違憲の疑を免れないであろう。」

 

としながら、

「法律の規定は、可能なかぎり、憲法の精神にそくし、これと調和しうるよう、合理的に解釈されるべきものであつて、この見地からすれば、これらの規定の表現にのみ拘泥して、直ちに違憲と断定する見解は採ることができない。すなわち、地公法は地方公務員の争議行為を一般的に禁止し、かつ、あおり行為等を一律的に処罰すべきものと定めているのであるが、これらの規定についても、その元来の狙いを洞察し労働基本権を尊重し保障している憲法の趣旨と調和しうるように解釈するときは、これらの規定の表現にかかわらず、禁止されるべき争議行為の種類や態様についても、さらにまた、処罰の対象とされるべきあおり行為等の態様や範囲についても、おのずから合理的な限界の存することが承認されるはずである。」

とし、いわゆる合憲限定解釈から、

「かように、一見、一切の争議行為を禁止し、一切のあおり行為等を処罰の対象としているように見える地公法の前示各規定も、右のような合理的な解釈によつて、規制の限界が認められるのであるから、その規定の表現のみをみて、直ちにこれを違憲無効の規定であるとする所論主張は採用することができない。」

としました。

 

そして、処罰の対象となる行為について、

「地公法六一条四号は、争議行為をした地方公務員自体を処罰の対象とすることなく、違法な争議行為のあおり行為等をした者にかぎつて、これを処罰することにしているのであるが、このような処罰規定の定め方も、立法政策としての当否は別として、一般的に許されないとは決していえない。ただ、それは、争議行為自体が違法性の強いものであることを前提とし、そのような違法な争議行為等のあおり行為等であつてはじめて、刑事罰をもつてのぞむ違法性を認めようとする趣旨と解すべきであつて、前叙のように、あおり行為等の対象となるべき違法な争議行為が存しない以上、地公法六一条四号が適用される余地はないと解すべきである。」

とし、二重のしぼりという限定を加えて、最終的には、被告人を無罪としました。

もっともも、この手法をとった上記最高裁の内容は、数年のうちに違った判断へとかわってしまいました。次回は、その判例をご紹介します。

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