身代金目的と営利目的の誘拐罪

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弁護士の佐藤です。

今週もはじまりました。

さて、本日からまた罪名を変えまして、本日は、誘拐罪に関する判例をみていこうと思います。

 

その前提として、誘拐罪といっても様々な条文があり、まず、刑法224条は、

未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

と規定しています。

次に、刑法225条は、

営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

とし、目的が加わることで、法定刑が重くなっております。

さらに、刑法225条の2は、

  1. 近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
  2. 人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。

とし、身代金目的の場合、さらに法定刑は重くなります。

そこで、本日ご紹介する判例は、身代金目的と営利目的との関係が問題となった判例です。

事案は、事業資金に窮した被告人が他人の子(当時6歳)を小学校からの帰宅中に、甘言をもちいて営利の目的で誘拐したというものです。

この点、東京高等裁判所昭和31年9月27日判決は、

「所論は、『被告人の原判示一の(一)の誘拐の所論は、刑法第二二四条所定の未成年者誘拐罪に該当するものであるにかかわらず、原判決が営利誘拐罪の規定である同法第二二五条を適用して処断したのは違法である。』というのである。しかしながら、未成年者に対する誘拐。行為であつても、それが営利の目的に出たものであるときは、刑法第一三四条を適用すべきではなく、同法第一三五条によつて処断すべきことは右各法条の文理上明らかであるのみならず、その立法趣旨に照らしてもまた疑を容れる余地がないから、本件の被害者たる原判示大谷正美は未成年者ではあるが、もし被告人に営利の目的があつたならば、その所為は単なる未成年誘拐罪ではなく、刑法第二二五条所定の営利誘拐罪が成立するものといわなければならないのである。換言すれば、本件被告人に営利の目的があつたと認められるかどうかという点が、問題を解決するに最も重要な焦点になるわけである。そこで、刑法第二二五条にいわゆる『営利の目的』というのはいかなる意味であるかという点について考えてみると、誘拐罪の保護法益は人の自由であることは刑法における同罪に関する規定の地位と、その規定の内容に照らして明白であるから、刑罰加重の要件である「営利の目的」という観念を定めるに当つてもまた右の立法趣旨にそうように解釈しなければならないのは当然である。ところで、刑法が営利の目的に出た誘拐を、他の動機に基くそれよりも、とくに重く処罰しようとする理由は、原判決も詳細に判示しているが、要するに営利の目的に出た誘拐行為は、その性質上他の動機に基く場合よりも、ややもすれば被誘拐者の自由に対する侵害が一層増大される虞があるためであつて、とくに被誘拐者その他の者の財産上の利益に対する侵害を顧慮したためではないと認められるから、刑法第二二五条にいわゆる「営利の目的」とは、ひろく自己又は第三者のために財産上の利益を得ることを行為の動機としている場合の総てをいうものではなく、被誘拐者を利用し、その自由の侵害を手段としで、自己又は第三者のために財産上の利益を得ようとする場合に限るものと解すべく、ただそれは被誘拐者を利用するものである限り、必ずしも誘拐行為自体によつて利益を取得する場合をも包含するものと解するを相当とする。」

とし、

「よつて進んで本件被告人に、果して右に述べたような営利の目的があつたかどうかという点について審究すると、原判決が証拠に基いて認定した被告人の所為は、要するに、釈放の代償、即ち、身代金を得る目的を以て原判示大谷正美を誘拐したというのであるが、かように釈放の代償を得るために人を誘拐するのは、財産上の利益を得るために、被誘拐者の身体を自己の支配下に置き、その自由を制限するものに他ならないから、そればとりもなおさず被誘拐者を利用して自己の財産上の利益を得ようとするものであつて、刑法第二二五条にいうところの営利の目的を以て人を誘拐したというのに該当するものといわなければならない。原判決は同条にいわゆる営利の目的という観念をひろく解し、『自己又は第三者のために財産上の利益を得ることを行為の動機としている場合はその利益を取得する手段、方法については何等の制限はない』という前提に立ち、『被誘拐者の身体を直接利用しようとする場合であると、そうでない場合とによつて差異を生ずるものではない。』と説明した上、被告人を営利誘拐罪に問擬しているが、営利誘拐罪における『営利の目的』とはさようにひろく解すべきものではないことは、さきに表示したとおりであるから、この点に関する原判決の見解は必ずしも正当であるということはできないけれども、本件被告人の誘拐行為は、右に説明したとおりの理由により刑法第二二五条所定の営利誘拐罪に該当するものであるから、同法条所定の営利誘拐罪に該当するものであるから、同法条の規定を適用処断した原判決の法令の適用は結局において正当に帰するものというべく、原判決には所論のような法令適用の誤りは存しないといわなければならない。」

として、身代金目的が営利目的にあたるとされました。

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