詐欺罪~知人を見送るといって逃走した場合~

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弁護士の佐藤です。

 

雨です。

 

嫌です。

 

さて、なんだか久しぶりな感じもしますが、本日も刑法に関する判例のうち、詐欺罪の成否が問題となった判例をご紹介します。

 

まず、事案ですが、被告人は、所持金がなく、かつ、代金支払の意思がないにもかかわらず、あるようによそおって、料亭で宿泊1回、飲食3回をして、その後、知人を見送るといって逃走し、代金の支払を免れたというものです。

 

ここで、争点となったのが、被告人の欺罔行為がどこかと言う問題です。

 

つまり、知人を見送ってくるという発言が欺罔行為となるのか、それとも、所持金もなく代金支払の意思もないのに、あるように装って注文をした行為が欺罔といえるかです。

 

この点、昭和30年7月7日最高裁判所判決は、

 

「刑法二四六条二項にいわゆる『財産上不法の利益を得』とは、同法二三六条二項のそれとはその趣を異にし、すべて相手方の意思によつて財産上不法の利益を得る場合をいうものである。従つて、詐欺罪で得た財産上不法の利益が、債務の支払を免れたことであるとするには、相手方たる債権者を欺罔して債務免除の意思表示をなさしめることを要するものであつて、単に逃走して事実上支払をしなかつただけで足りるものではないと解すべきである。されば、原判決が『原(第一審)判示のような飲食、宿泊をなした後、自動車で帰宅する知人を見送ると申欺いて被害者方の店先に立出でたまま逃走したこと』をもつて代金支払を免れた詐欺罪の既遂と解したことは失当であるといわなければならない。しかし、第一審判決の確定した本件詐欺事実は『被告人は、所持金なく且代金支払の意思がないにもかかわらず然らざるものの如く装つて東京都文京区a町b料亭A事B方に於て昭和二七年九月二〇日から同月二二日迄の問宿泊一回飲食三回をなし同月二二日逃亡してその代金合計三万二千二百九十円の支払を免れたものである』というのであるから、逃亡前すでにBを欺固して、代金三二二九〇円に相当する宿泊、飲食等をしたときに刑法二四六条の詐欺罪が既遂に達したと判示したむのと認めることができる。されば逃走して支払を免れた旨の判示は、本件犯罪の成立については結局無用の判示というべく、控訴を棄却した原判決は結局正当である。従つて、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。」

として、知人を見送ってくるという発言だけでは、詐欺罪は既遂とならないとし、もっとも、所持金も支払う意思もなく飲食を頼み、飲食をした時点で詐欺罪の既遂としました。

 

この論点も司法試験ではおなじみでして、事案が少し違うのですが、支払う意思を有し、飲食店で注文をしたものの、飲食中に所持金がないことに気付き、だれもいわずに、こっそり逃走したという事案では、詐欺罪は成立しないという事案が今でも印象に残っています。

 

 

本当に司法試験の勉強をやり出した頃の話ですが、まず、支払う意思がある以上、注文行為が欺罔行為といえず、こっそり逃走しているので、その後の行為にも欺罔行為がないからです。

 

もちろん、民法上の債権は残るため、民法上請求していくことは可能ですが。

 

本判例もなかなか懐かしい事案です。

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