親族相盗例

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弁護士の佐藤です。

 

本日は一日日本弁護士連合会の会議です。

 

さて、本日も簡単に刑法に関する判例をご紹介しますが、みなさんは、刑法に親族相盗例という規定があることをご存知でしょうか。

 

刑法244条は、

  1. 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
  2. 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
  3. 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

 

と規定し、配偶者等の親族間で刑法235条、つまり窃盗罪の未遂があった場合は、その刑を免除するなどの特別な規定をおいています。

こうした規定が適用されるのは、窃盗罪のほか、不動産侵奪罪(235条の2)・詐欺罪(246条)・電子計算機使用詐欺罪(246条の2)・背任罪(247条)・準詐欺罪(248条)・横領罪等(252条)・業務上横領罪(253条)等とそれらの未遂罪に適用されます。

 

本特例の趣旨は「国家は親族間の紛争には介入を控える」というところにあると考えられています。

 

そこで、本日ご紹介する判例は、内縁関係、つまり籍をいれていない男女間に、この親族相盗例の適用があるのかが問題となった事例です。

 

この点、東京高等裁判所昭和60年9月30日判決は、

 

「刑法244条1項の親族相盗例の規定は、親族間の事件については、刑罰をもって干渉することを差し控え、家庭内の自律に委ねるという刑事政策的考慮に基づくもので、人的な処罰阻却事由を定めたものと解されるところから、同項にいう配偶者とは、民法上婚姻が有効に成立している場合に限られ、いわゆる内縁ないし準婚関係にあるものを含まないものと解すべきであり、たとえ、右内縁等の関係が実質的に婚姻関係がある場合と同視しうる実態を伴う場合であったとしても、右規定を適用する余地はなく、右のような場合に情状において考慮するほかないものというべきである。」

 

とし、内縁関係にあるものには、親族相盗例の適用はないものとしました。

 

家庭内の自律に委ねるという趣旨であれば、実質的に婚姻関係にあるものと同視しうる場合には適用があってもよいような気がしますが、結局は、内縁関係にあるかないかという立証が難しく、画一的に処理するためには、形式面を重視しなければいけないということになるのではないでしょうか。

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