覚せい剤投与により錯乱状態になった被害者の放置

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弁護士の佐藤です。

 

早いもので金曜日ですが、早いもので9月も終わりです・・・。

最近時間がたつのが早いと感じることがおおく、なんだかよくわからない焦りのようなものを感じたりします。

 

で、本日も刑法に関する判例をご紹介しますが、本日も保護責任者遺棄罪についての判例です。

 

本日は、被告人は、暴力団構成員で、本件被害者をホテルに連れ込んで、覚せい剤を注射したところ、被害者が苦しみ出し、ホテルの窓から飛び下りようとするなど錯乱状態に陥ったのに、覚せい剤使用の事実の発覚をおそれ、被害者をそのままに放置して、ホテルを立ち去り、その後ほどなくして、被害者は、同室で覚せい剤による急性心不全により死亡したという事案です。

 

なお、この裁判の過程では、被害者が錯乱状態に陥った時点で救急車を呼んでいれば、十中八九救命できたという救急医療と法医学の各専門家の証言がありました。

 

一審判決は、現実の救命可能性が100パーセントであったとはいえないとして、遺棄行為と死の結果との間に因果関係を否定し、保護者遺棄罪の限度で有罪としたのに対し、高裁判決は、救命することが十分可能であったのであり、各証言が100パーセント確実であったとしないのは、事実評価の科学的正確性を尊ぶ医学者の立場として当然であるとして、因果関係を肯定し、保護者遺棄致死罪の成立を認めました。

そして、注目の最高裁平成元年12月15日判決は、

「被害者の女性が被告人らによって注射された覚せい剤により錯乱状態に陥った午前零時半ころの時点において、直ちに被告人が救急医療を要請していれば、同女が年若く(当時一三年)、生命力が旺盛で、特段の疾病がなかったことなどから、十中八九同女の救命が可能であったというのである。そうすると、同女の救命は合理的な疑いを超える程度に確実であったと認められるから、被告人がこのような措置をとることなく漫然同女をホテル客室に放置した行為と午前二時一五分ころから午前四時ころまでの間に同女が同室で覚せい剤による急性心不全のため死亡した結果との間には、刑法上の因果関係があると認めるのが相当である。したがって、原判決がこれと同旨の判断に立ち、保護者遺棄致死罪の成立を認めたのは、正当である。」

と判示し、保護責任者遺棄致死罪の成立を認めました。

 

これは、不作為、つまり、ないもしないで放置したという場合、期待された作為がなされていれば結果が生じなかったであろうといえる場合に、不作為と結果との因果関係が認められると考えられています。

もっとも、本件で、100%助かったという証明はできないでしょうから、上記証言をもとに因果関係を認めたものとなっておりますが、因果関係の認定は、今後の判例の蓄積がまたれるところです。

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