衆議院本会議の議事の業務性

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弁護士の佐藤です。

 

本日はよい天気で気持ちがいいです。

 

午後は事務所にこもって起案ですが・・・。

 

さて、本日も業務妨害罪の成否が問題となった判例をご紹介しますが、本日は、衆議院本会議の議事の業務性が争点となった判例です。

 

どういうことかといいますと、被告人らは、いわゆる沖繩返還協定の批准に反対する意図をもつて、右協定が審議される第六七臨時国会の衆議院本会議の議事を妨害しようと企て、 昭和46年10月19日午後12時30分ころ、衆議院傍聴人入口から、予め用意した爆竹数個、日本手拭よりやや大きめの白布に「批准国会粉砕!第三の琉球処分粉砕、沖繩青年同盟行動隊」とマジツクインキで書き入れた横幕一枚等をかくし持つて、本会議場傍聴席に立ち入り、同日午後1時15分ころ、折から本会議開催中の衆議院議場において、内閣総理大臣佐藤栄作の所信演説が行なわれている際、同所傍聴席において、爆竹を数回連続して鳴らすなどして、議事の進行を阻害し、もつて、威力を用いて衆議院の業務である会議を妨害したというものです。

 

被告人の弁護人は、威力業務妨害の客体は国会衆議院本会議の議事であるが、それは非現業的公務であるのみならず、国家の統治権に基づく優越的意思の発動たる作用であつて、まさに支配的権力的公務にほかならないし、また、これに対する妨害に対しては、議長の補助機関である衛視等によつて自力でこれを排除する自力執行力を与えられているから、衆議院本会議の議事は威力業務妨害罪による保護の対象とはならないと主張しました。

この点、昭和48年9月6日東京地方裁判所判決は、本会議議事の業務性について、

 

「本件威力業務妨害の対象である衆議院本会議の議事が公務員によつて行なわれる『公務』であることは明らかである。ところで、およそ公務のうち、いわゆる権力的作用を行なう職務(以下、単に権力的職務と称する)については、その執行に際し、これを受ける側から抵抗されることがあるのは、当然予想されるところであるから、かかる職務の執行に従事する者に対しては、法が自ら右抵抗を排除してまで執行を遂げる権能すなわち自力執行力を付与している。したがつて、右抵抗が暴行、脅迫の程度に至らない威力に止まる限りは、自らこれを排除すれば足り、敢えて刑罰を科する必要はないので、かかる職務は威力業務妨害罪の客体たる「業務」から除かれていると解することができるのに反し、公務のうち非権力的職務、すなわち、直接私人に対し命令、強制を現実に加える以外の職務については、これに対する妨害が暴行・脅迫の程度にいたらない、たんなる威力によるものであつても、その職務には性質上、自力執行力が付与されていないから、一般民間企業における業務と同様、刑罰による保護の必要性があると解することには合理性が認められ、かつ、最高裁判所大法廷判決(昭和四一年一一月三〇日言渡刑集二〇巻九号一〇七六頁以下)の趣旨にも合致するものと考えられる。」

 

とし、

「そこで翻つて、本件の衆議院本会議の議事が、右にいわゆる権力的職務と非権力的職務のいずれに属すると解すべきかについて検討するに、なるほど、国会の会期中は、議長は議院の紀律を保持するための内部警察権を有し(国会法一一四条)、議長は必要に応じて警察官の派出を要求し得るほか(同法一一五条)、議員以外の者が議院内部において秩序をみだしたときは、議長はこれを院外に退去させ、必要な場合は、これを警察官庁に引渡すことができる(同法一一八条の二)とともに、その執行については、議長が衛視および警察官を指揮してこれにあたらせることとされているから(衆議院規則二〇人条)、議院内部における妨害は一応衛視等によつて排除することが可能であることは、弁護人所論のとおりである。したがつて、右の内部警察権に基づく執行は、衛視等が現実に強制力を行使し、かつ、これに対する妨害も自ら排除することができるから、衛視等の職務については、これを権力的職務であると解することもできるが、しかし、右衆議院本会議の議事については、それ自体現実に強制力を行使することを内容とする職務でないことは明白であり、たとえ、それが国家の統治権に基づくものであつても、その態様においては一般社会の会議となんら異なるところはないのである。また、法が右のように議長に内部警察権の権限を付与したのは、国会が国政を議する国権の最高機関であり、言論の府であることにかんがみ、院内の紀律保持の観点から、たんに妨害排除機能を認めたにほかならず、これをもつて法が衆議院本会議の議事自体に自力執行力を付与したと解することはとうていできない。したがつて、衆議院本会議の議事自体は非権力的職務に属するものというべく、これに対する暴行・脅迫に至らない程度の妨害は威力業務妨害罪を構成すると解するのが相当である。」

 

と判示し、本秋着の議事の業務性を認めました。

 

公務執行妨害罪と業務妨害罪との関係は、学説の対立があるところですが、公務の業務妨害罪の成否は、公権力の行使の有無で判断するという通説的立場からすると、上記判例の結論は妥当といえるのではないでしょうか。

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