自殺幇助罪と殺人罪

024

弁護士の佐藤です。

さて、今週もはじまりましたが、今週は月曜と木曜が祝日で、本日を含め3日しかありません。集中してがんばりたいと思います。

さて、前回まで憲法に関する判例をみてきましたが、有名な判例はだいたい網羅したと思いますので、本日からはがらっと変えて刑法に関する判例をご紹介していきたいと思います。

新聞やニュースなどでは、刑事事件の方が取り上げやすいので、憲法の判例と異なり、なじみがあるかもしれません。

 

で、本日からまず、殺人罪に関する判例をいくつか紹介したいと思います。

殺人罪については、刑法199条に規定があり、

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

とされ、罪名はみなさんご存知だと思いますが、刑法には202条に

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。

と規定され、自殺幇助罪や同意殺人罪とよばれている条文です。

教唆とはそそのかすことで、幇助は助けるという意味で、当然ですが、自殺に関与したり、同意があったとしても、人を殺すことは罪となります。

そして、本日ご紹介する判例の事案は、被告人が、被害者(女性)が自己を熱愛し、追死してくれるものと信じているのを奇貨として、同女のみを毒殺するために、追死する意思がないのに追死するものと装い同女を誤信させ、毒薬を飲ませて中毒死させたという偽装心中に殺人罪が成立するかという事案です。

つまり、被害女性は、死ぬこと自体は同意をしているので、動機に錯誤があるだけであり、承諾があったものとして、上記刑法202条が成立するのではないかというのが争点です。

この点、昭和33年11月21日最高裁判決は、

「原判決の意図するところは、被害者の意思に重大な瑕疵がある場合においては、それが被害者の能力に関するものであると、はたまた犯人の欺罔による錯誤に基くものであるとを問わず、要するに被害者の自由な真意に基かない場合は刑法二〇二条にいう被殺者の嘱託承諾としては認め得られないとの見解の下に、本件被告人の所為を殺人罪に問擬するに当り如上判例を参照として掲記したものというべく、そしてこの点に関する原判断は正当であつて、何ら判例に違反する判断あるものということはできない。」

とし、

「本件被害者は自己の死そのものにつき誤認はなく、それを認識承諾していたものであるが故に刑法上有効な承諾あるものというべく、本件被告人の所為を殺人罪に問擬した原判決は法律の解釈を誤つた違法があると主張するのであるが、本件被害者は被告人の欺罔の結果被告人の追死を予期して死を決意したものであり、その決意は真意に添わない重大な瑕疵ある意思であることが明らかである。そしてこのように被告人に追死の意思がないに拘らず被害者を欺罔し被告人の追死を誤信させて自殺させた被告入の所為は通常の殺人罪に該当するものというべく、原判示は正当であつて所論は理由がない。」

として、殺人罪を適用した原審の判断を支持しました。

結論としては、感覚としてみなさん妥当だと思いますし、感情的にも許せないとは思いますが、この問題が突き詰めて考えると非常に難しいもので、前述したとおり、動機に錯誤があるだけで、死に対しては同意をしている以上、刑法202条が成立するとする学説もあるところです。

刑法というのは、保護法益というものがあり、その罪名で守るものというものがあります。その保護法益を考える場合、個人の自己決定権をどのようにみるか等が問題となったりして、非常に哲学的な要素があるところです。

ページの先頭へ