第三者所有物没収事件

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弁護士の佐藤です。

 

今週もはじまりました。

 

さて、前回までは財産権に関する判例をご紹介しましたが、本日は、憲法31条に関する判例をご紹介します。

 

憲法31条は、

 

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない

 

と定められています。

 

憲法31条は、法文では、手続が法律で定められることを要求するにとどまっているように読めますが、それだけでなく、法律で定められた手続が適正でなければならないこと、実体もまた法律で定められなければならないこと、法律で定められた実体規定も適正でなければならないことを意味すると考えられています。

 

そして、本日ご紹介する判例は、法律で定められた手続が適正でなければならないという、いわゆる告知聴聞の手続が問題となった事件です。

 

第三者所有物没収事件とよばれているもので、貨物の密輸を企てた被告人が有罪判決を受けた際に、その付加刑として、密輸にかかる貨物の没収判決を受けたのですが、この貨物には被告人以外の第三者の所有する貨物が混じっており、そこで、被告人は、所有者たる第三者に事前に財産権擁護の機会を与えないで没収することは違憲であると主張した事件です。

 

この点、昭和37年11月28日最高裁判決は、

 

「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。けだし、憲法二九条一項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同三一条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが、前記第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であつて、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。そして、このことは、右第三者に、事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは、別個の問題である。然るに、旧関税法八三条一項は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合においてもこれを没収する旨規定しながら、その所有者たる第三者に対し、告知、弁解、防禦の機会を与えるべきことを定めておらず、また刑訴法その他の法令においても、何らかかる手続に関する規定を設けていないのである。従つて、前記旧関税法八三条一項によつて第三者の所有物を没収することは、憲法三一条、二九条に違反するものと断ぜざるをえない。」

 

として、違憲の判断をしました。

 

結論としては当然妥当ですが、この判例にはもう一つ争点があって、第三者所有物没収の違憲主張を、第三者ではない被告人が主張し上告できるのかというものがありました。

 

この点については、上記最高裁は、

 

「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである」

 

と判示し、被告人が第三者所有物の没収の違憲性を主張して上告できると判示しました。

 

この判決以前の最高裁は、むしろこの第2の争点を理由にして上告を退けていたので、ここまで判示したこの最高裁判例の意義を大きいといえます。

 

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