窃盗罪の既遂時期

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弁護士の佐藤です。

 

さて、正月ボケもおちおついてきましたので、昨年からやっている判例のご紹介を本日からまたしていきたいと思います。

 

先日から刑法に関する判例のうち、窃盗罪の成否が問題となった判例をご紹介してきました。

本日も窃盗罪に関するものなのですが、今回争点となったものは、窃盗罪の既遂時期です。

 

例えば、工場に忍びこんで、工場の何かを盗った場合、どの時点で窃盗罪が既遂となるのでしょうか。

工場内のものを自分のポケットやバッグにしまった時なのか、工場の建物を出たときなのか、はたまた、工場の敷地からでたときなのか。

 

本日ご紹介する事例は、まさに、それが争点となったもので、事案は、被告人は共犯者と窃盗を共謀の上、昭和28年1月19日午後七時頃〇〇電鉄工場の構内東方にある資材小屋内から本件アクスルメタル4個を取り出し、これを構外へ運び出すため各自2個ずつを手に持ちその場所から同構内西方約百七、八十米の個所まで運搬し、未だ構外に出ない内に同工場夜間作業員等に発見せられ、その目的を遂げなかったというものです。

 

この点に関し、昭和29年5月4日大阪高等裁判所判決は、

 

「窃盗罪が既遂の域に達するには、他人の支配内にあるものをその支配を排して自己の支配内に移すことを要する。しかして窃盗犯人がその目的物件を工場の資材小屋内から取出し、未だ工場の構外に搬出しないような場合において、構内が一般に人の自由に出入し得るが如き場所であり、構内から物件を構外に搬出するにつき、なんら障碍排除の必要のないような場合には、犯人はその目的物件を小屋内から工場構内へ取出すと同時にその目的物に対する占有者の支配を排してこれを自己の支配に移したものといい得るから窃盗既遂をもつて論ずることができる。しかし、目的物件を小屋外へ取出しても、構内は一般に人の自由に出入することができず、更に門扉、障壁、守衛等の設備があつて、その障碍を排除しなければ構外に搬出することができないような場合には、その目的物件をその障碍を排除して構外に搬出するか、あるいは少なくともそれに覆いをかぶせいんとくする等適宜の方法になりその所持を確保しない以上、未だその占有者の事実上の支配を排除して自己の支配内に納めたものとはいえないから、たとえその目的物件を小屋から構内を相当距離運搬したとしても、窃盗既遂をもつて論ずるわけにはいかない。けだしこの場合といえども構内全体には完全な管理者の支配が及んでいるからである。」

 

 

として、本件では、窃盗罪の既遂は成立せず、窃盗未遂にとどまるとの判断をしめしました。

 

上記判例は、他人の支配内にあるものをその支配を排して自己の支配内に移すことを要するという基準をもうけているため、構内からでなければ窃盗既遂とならないといっているわけではなく、建物や敷地の構造、窃取の目的物の形状等を総合的に判断して決するものいえ、目的物が小さい場合には、本件と異なる判断もありえるものと思われます。

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