消費者問題7~プライバシー侵害について~

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弁護士の佐藤です。

前回は、肖像権についてお話しましたが、本日はプライバシー侵害について、判例を参考に少し説明したいと思います。

プライバシーの権利は、憲法13条の人格権に基づく権利として判例上も認められた権利です。下級審判例では、プライバシー権を他人に知られたくない私生活上の事実又は情報をみだりに開示されない権利と定義づけています(大阪高裁平成21年9月17日判決)。

この他人に知られたくない私生活上の事実は、例えば、前科前歴や病歴等に限ったことではありません。氏名、住所、電話番号、仕事など秘匿性がそれほど高くない情報もプライバシー権で保護される情報に含まれると考えられています。

下級審判例では、氏名、電話番号、住所がプライバシーとして保護されるものにあたるかにつき、「他人に知られたくない私的事柄をみだりに公表されないという利益(プライバシーの利益)は、他人がみだりに個人の私的事柄についての情報を取得することを許さず、また、他人が自己の知っている個人の私的事柄をみだりに第三者へ公表したり、利用することを許さず、もって人格的自律ないし私生活の平穏を維持するという利益の一つの内容として、法的保護の対象となるというべきであり、そのためには、公表された事柄が、①私生活上の事柄又は私生活上の事柄らしく受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準にして、当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、③一般の人に未だ知られていない事柄であることを必要とするものと解される。」とした上で、氏名等は、「社会生活上、公的機関や友人など一定の範囲の者に了知され、これらの者により日常的に利用される情報であること(公知の事実)からすれば、必ずしも私生活上に限られた事柄であるものとはいい難い面も存する。しかし、個人の氏名、電話番号及び住所といった情報は、その私生活の本拠である住居に関するものであること、現代社会においては、このような情報が当該個人の了解する範囲外の者の目にさらされることによって私生活上の平穏が害されるおそれが増大しつつあること(公知の事実)、プライバシーの利益の保護が人格的自律ないし私生活上の平穏の維持をその主旨とすること、以上によれば、原告の氏名、電話番号及び住所は、私生活上の事柄である(前記①)ものというべきである。また、原告が嫌がらせ電話などで悩んだ経験を有していること、原告が被告に対し自己の氏名、電話番号及び住所を電話帳に掲載しないよう事前に明示的に求めたこと、本件一の電話帳の掲載件数が掲載対象件数の半数にも満たないこと、以上の事情からすれば、本件における原告の氏名、電話番号及び住所は、一般人の感受性を基準にして、原告の立場に立った場合、公開を欲しない事柄である(前記②)といえる。更に、原告の氏名、電話番号及び住所は出身高校の同窓会名簿、所属学会の名簿及び東京都職員名簿に掲載されており、かつ、公的機関等に保有されているものと思われるが、これらのことは、本件一及び二の各電話帳の配布対象者らが配布当時(平成七年二月ころ)以前において原告の電話番号等を了知していたことを推認させるに足りるものではないから、原告の氏名、電話番号及び住所は、一般の人に未だ知られていない事柄である(前記③)ものというべきである。」として、法的に保護された利益としてのプライバシーに属するものというべきであるとしました(東京地裁平成10年1月21日判決)。

そして、プライバシー権でよく問題となるのは、上記情報を保有する者が、同意なく開示してしまうというケースです。

上記下級審判例は、原告が電話帳への氏名、住所、電話番号の掲載を拒絶したにもかかわらず、電話会社が誤って電話帳に掲載したという事例で、電話会社に10万円の慰謝料の支払いを命じました。

もっとも、情報の開示がすべて損害賠償請求の対象となるわけではありません。

マンションを販売した業者が、マンション購入申込書に記載された購入者の勤務先及び電話番号をマンションの管理を委託する予定の会社に開示したという事例で、下級審は、上記情報が法的に保護された利益としてのプライバシーに属するとし、さらには、開示行為もプライバシー侵害行為にあたるとしながらも、その開示の目的が、「本件マンション購入者への伝達のために、本件マンション購入者の連絡先を把握することにあり、同被告はこの時点では正式に本件マンションの管理委託を受けていたわけではないものの、本件マンションの管理会社となることについては、購入者全員の承諾を得ていていわば既定の事実であったのであるから、右購入者名簿の交付の目的は正当なものであったということができる。」などとして、違法性を欠くことを理由に、不法行為が成立しないとしました(東京地裁平成2年8月29日判決)。

つまり、判例は、多くの場合にプライバシー侵害があったことを認めながらも、開示行為等に正当な理由がある場合には、違法性がないとして損害賠償請求を認めないという立場にたっています。

したがって、同意のない情報公開については、この正当な理由があったか否かが裁判において主要な争点となるといえるでしょう。

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