民法1~民法第1条(権利濫用)について~

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弁護士の佐藤です。

これまでは、相続や交通事故、離婚、不動産トラブルや労働問題といったテーマ毎に事例等を上げながらお話してきましたが、今回から、しばらく、民法の条文について、その解釈や判例等を参考にお話していこうかと思います。

なぜ民法かといいますと、弁護士で一番つかう法律は断トツに民法だからです。もちろん会社法なども使いますが、司法試験の勉強でも、まずは民法の知識、考え方から学ぶのがもっとも重要だと思います。

それと、私の民法の復習の意味も入っています・・・。というか、こちらの方が大きいか・・・。

で、記念すべき第1回は、民法第1条です!!

民法第1条は、

1 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

と規定されています。

ここでとりあげたいのは、第3項の権利の濫用です。過去のブログでもどこかで取り上げた気がしますが、たとえ行使できる権利を有していたとしても、その濫用は許さないというものです。

ここで、事例をあげて説明します。

権利の濫用でもっとも有名な判例は宇奈月温泉事件というものです。司法試験の勉強をされた方は、まず最初に勉強する判例ではないでしょうか。

どういう事件かといいますと、宇奈月温泉では7.5km先にある黒薙温泉から地下に埋設させた木製の引湯管を使いお湯を引いていました。この引湯管は大正6年にA社が当時の価格で30万円を費やし、埋没させる土地の利用権を有償ないし無償で獲得して完成させたものであります。しかし、この引湯管は途中で利用権を得ていない甲土地を2坪分だけ経由してしまっていました。この土地はBの所有する112坪の乙土地の一部ですが、112坪の乙土地全体が、利用が非常に難しい急傾斜地にありました。

この引湯管はその後、宇奈月温泉行きの鉄道を所有しているY社によって営まれていました。またBは、引湯管が経由している2坪を含めた112坪の乙土地全体を1坪あたり26銭でXに売却していました。

乙土地を買ったXは、不法占拠を理由に、Y社に対して引湯管を撤去するか、さもなければ乙土地の周辺の土地を含めた計3,000坪を1坪7円総額2万円余りで買い取るよう求めたのですが、Y社がこれに応じなかったため、XはY社に対して妨害排除請求として引湯管の撤去等を求めて提訴したとう事案です。

そして、大審院(今で言う最高裁)は「権利ノ濫用」という文言を判決文中で初めて用い、Xの請求(所有権の行使)は権利の濫用にあたるため認められない、として請求を棄却したのです。

すなわち、利用価値の無い本件土地は原告(X)にとってなんら利益をもたらさないのに対し、請求を認めて引湯管を撤去すれば、宇奈月温泉と住民に致命的な損害を与えることになり、このような結果をもたらす所有権の行使に基づく請求は所有権の目的に反するものであり、権利の濫用であって権利行使が認められない、としたのです。

本来であれば、所有権に基づいて妨害排除請求をすることは可能ですが、原告の目的の内容や、認めた場合の不利益を考慮して、権利濫用にあたるとして、認めなかったという事案です。

もっとも、この条文は例外的な規定で、権利の濫用と主張することは実務ではあんまりありません、少なくとも私の経験では。共有物分割請求で使ったくらいですかね。

本来は権利行使は自由なはずなので、よほどの悪質な訴えなどで登場する条文といえるでしょう。

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