民事保全1~はじめに~

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弁護士の佐藤です。

新年度ですね。

前回まで民事執行についてお話してきました。民事執行は、要は、判決がでて勝ったとしても、相手方はお金等を払わない場合、つまり判決に従わない場合にどうするかという手続でした。

しかし、裁判で勝っても、相手方に強制執行できるような財産がないと判決も意味がありません。また、裁判を始める前は、相手に財産があり、その口座までわかっているのに、裁判が始まってから、相手方が、自分の財産を隠してしまい、いざ、裁判に勝って強制執行をしても、その口座はからだったということも十分に想定できます。

そこで、法律は、そのような財産隠し等をさせないために、裁判が始まる前に、あらかじめ、その財産の処分をさせなくさせることを認めています。もちろん、暫定的な処置なので要件を満たすことが必要です。その要件というものを定めているのが民事保全法というものです。

民事保全法の手続としては、大きくわけて、仮差押と仮処分というものがあります。

仮差押という手続は、金銭の支払を目的とする債権につき、債務者の財産の現状を維持しておかないと、後日強制執行が不能または困難となるおそれがある場合、つまり先ほど述べたような事例の場合に、その執行保全の目的で債務者の財産の処分を禁じ、その状態を維持できるようにする暫定的処置です。民事保全法第20条に規定があります。

動産・不動産に仮差押が執行されると、債務者は仮差押のなされた財産を勝手に譲渡したり、担保に提供したりすることが禁じられます。たとえ、債務者が勝手に処分したとしても、その処分は仮差押債権者には通用しません。

また、債権の仮差押を受けた第三債務者が、これに反して債務者に弁済しても債権者には通用せず、第三債務者は、債権者に対してさらに支払わなければならなくなります。

次に、仮処分は、「係争物に関する仮処分」と「仮の地位を定める仮処分」とに分けられます。これは、民事保全法第23条に規定されています。

係争物に関する仮処分とは、動産の引渡請求権や建物の明渡請求権などの金銭債権以外の債権の強制執行を保全するために、その処分を禁止したり、占有の移転を禁止したりするものです。例えば、不動産の明渡しを目的としてその住人に対し裁判を起こして勝ったが、判決がでたあとに、別の人に建物を譲渡してしまうと、判決は、当然、元の住民を相手に起こしているので、新しい住人には効力が及びません。そこで、そういう譲渡をさける等の措置が係争物に関する仮処分です。

これに対して、仮の地位を定める仮処分は、執行の保全というよりも、権利関係について現実に生じている著しい損害を避け、もしくは、切迫した危険を防いで債権者を保護するため、権利関係を暫定的に定めるためのものです。これは金銭債権・土地や建物などの特定物の給付請求権に限らず、あらゆる紛争の解決に認められており、具体的には、建築禁止仮処分や営業妨害禁止仮処分などのほか、建物明渡し、商品引渡の仮処分などがあります。例えば、日照権などの問題で、マンションの建築を中止させるよう裁判を起こしたとしても、裁判は何ヶ月、何年もかかるので、その間に建築が完成してしまうこともあります。そこで、そういった行為を避けるために、仮の地位を定める仮処分をして、建築を暫定的に中止させておくのです。

では、次回は、民事保全における担保金について、話しをしていこうと思います。

 

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