死者の占有3

015

弁護士の佐藤です。

 

おそらくですが、本年最後のブログです。

 

前回同様、死者の占有についての判例をご紹介します。

 

事案ですが、被告人は、同棲中の女性を居住中の家屋で殺害し、したいを自動車で運搬して海岸に遺棄し、同棲先に戻って(殺害後3時間後)指輪を奪い、また(86時間後)そこから時計等を奪ったというものです。

 

時間的ファクターからすると、前回の判例をもとにすれば、86時間後の行為に窃盗罪は成立しないように思われます。

 

この点、昭和39年6月8日東京高等裁判所判決は、

 

「人の財産に対する所持の保護は、もとよりその人の死亡により原則的には、これを終結すべきものであるけれどもその生存から死亡えの推移する過程を単純に外形的にのみ観察し、あらゆる特殊的な事情に眼を覆つて、これを一律に決定するようなことは、法律評価上これを慎まなければならない。本件において、被告人は、・・・・を殺害し、みずから・・の死を客観的に惹起したのみならず、さらに、その事実を主観的に認識していたのであるから、刑法第二五四条の占有離脱物横領罪とは、その法律上の評価を異にし、かつ、被告人の奪取した本件財物は、右・・が生前起居していた前記家屋の部屋に、同女の占有をあらわす状態のままにおかれていて、被告人以外の者が外部的にみて、一般的に同女の占有にあるものとみられる状況の下にあつたのであるから、社会通念にてらし、被害者たる・・が生前所持した財物は、その死亡後と奪取との間に四日の時間的経過があるにしても、なお、継続して所持しているものと解し、これを保護することが、法の目的にかなうものといわなければならない。けだし、被害者から、その財物の占有を離脱させた自己の行為の結果を利用し、該財物を奪取した一連の被告人の行為は、他人たる被害者の死亡という外部的事実によつて区別されることなく、客観的にも主観的にも利用意図の媒介により前後不可分の一体をなしているとみるのが相当であるから、かかる行為全体の刑法上の効果を綜合的に評価し、もつて、被害者の所持を、その死亡後と奪取との間に四日の時間的経過があるにしても、なお、継続的に保護することが、本件犯罪の特殊な具体的実情に適合し、ひいては、社会通念に合致するものというべきである。したがつて、被告人の原判示第三および第四の各所為は、いずれも被害者・・の所持する財物を奪取したものとして、窃盗罪を構成するものというべきであつて、原判決には、所論のような違法はないから、論旨は理由がない。」

 

とし、窃盗罪の成立を認めました。

 

ここで、上記高裁判決は、理由付けに、「被害者から、その財物の占有を離脱させた自己の行為の結果を利用し、該財物を奪取した一連の被告人の行為は、他人たる被害者の死亡という外部的事実によつて区別されることなく、客観的にも主観的にも利用意図の媒介により前後不可分の一体をなしている」ということを上げていることからすると、前回ご紹介した判例ではん、間違いなく窃盗罪の成立が認められることになるでしょう。

自己の行為の結果を利用した場合に窃盗罪の成立を認めるという理屈は、一般的な感情に合致するものといえ、判断としては本件高裁判決を支持します。

もっとも、上記高裁の判決をもとにしても、時間的経過というファクターは検討せざるを得ず、たとえば、これが1年後であれば、やはり窃盗罪の成立を認めるというのは難しいのではないかと思います。

 

特殊な事案といえますが、個別具体的に判断していくしかないのでしょう。

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