業務上過失致死罪の業務性

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弁護士の佐藤です。

さて、前回まで凶器準備集合罪に関する判例をご紹介してきましたが、本日からはまた罪名を変え、業務上過失致死罪に関する判例をご紹介したいと思います。

 

まず、前提として、刑法は過失致死罪というものを規定しており、刑法210条は、

過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。

としています。

そして、さらに、刑法211条は、

業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

と規定し、過失により人を死傷させてしまった場合、業務上の過失は刑罰を重くしているのです。

 

そこで、この業務性にあたるか否かということがたびたび問題となりました。

 

まず、本日の事案ですが、免許を受けて狩猟の免許を受けたものが、誤って人を撃ってしまったというものです。

 

この点、最高裁判所昭和33年4月18日は、

「刑法二一一条にいわゆる業務とは、本来人が社会生活上の地位に基き反覆継続して行う行為であつて(昭和二五年(れ)一四六号同二六年六月七日第一小法廷判決、集五巻七号一二三六頁参照)、かつその行為は他人の生命身体等に危害を加える虞あるものであることを必要とするけれども、行為者の目的がこれによつて収入を得るにあるとその他の欲望を充たすにあるとは問わないと解すべきである。従つて銃器を使用してなす狩猟行為の如き他人の生命、身体等に危害を及ぼす虞ある行為を、免許を受けて反覆継続してなすときは、たといその目的が娯楽のためであつても、なおこれを刑法二一一条にいわゆる業務と認むべきものといわねばならない。」

 

とし、行為の目的をとわず、反復継続してなす行為を予定しているかどうかという基準を設定しました。

 

そして、本件については、

「本件において、被告人が昭和二七年一〇月二〇日附東京都発行第七七六七号乙種狩猟免許状を有して狩猟に従事していたものであるとの第一審判決判示事実は、原判決もこれを認めているところである。 そして第一審判決挙示の証拠中被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書によれば、被告人は昭和一一年以来一〇数年に亘る狩猟家としての経歴を有し、その間昭和一一年当初は田無猟友会員に、本件当時は武蔵野猟友会員になつており、昭和一六年は応召のため又昭和二五年二六年は仕事の関係で休んだ外は、毎年狩猟免許を受けて狩猟を続けて来たものであり、本件当時においても、自己の猟犬を使用して狩猟行為をしていたことが認められ、被告人が反覆継続の意思を以てこれを反覆継続していたことが推測されるのである。これらの事実関係に徴すると、被告人の本件狩猟行為はこれを刑法二一一条にいわゆる業務と認定するのが相当である。然るに、原判決が、娯楽のために行う者の狩猟行為は、たとえ、それが狩猟免許者の行うところであるにしても、刑法二一一条にいわゆる業務に該らないという見解に立ち、被告人が狩猟をいわゆる業務としていた事実は、これを証拠上確認するに由がないとして、被告人の本件所為を刑法二一一条の業務上過失傷害の罪に問うべき場合でないと判断したのは、刑法二一一条の解釈を誤りひいて判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認をおかしたものであつて、これを破棄しなければ著しく正義に反するといわねばならない。よつて刑訴四一一条一号三号、四一三条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。」

として、狩猟行為の反復継続性を認め、業務性を認めました。

 

本事案の高裁は、

「刑法第二百十一条にいわゆる業務とは、人が継続して或事務を行うにつき有する社会生活上の地位であつて、その自ら選定したものを言い、その事務の公私孰れであると、報酬利益を伴うと否とを分たず、又その者の主たる事務であると従たる事務であるとは何等関係はないが、娯楽のために行うところであるにしても、右にいわゆる業務に該らないことは、夙に大審院判例(大審大正八年(れ)第一七〇四号大正八年一月十三日第二刑事部判決大審刑録第二五輯一〇八頁参照)が、趣旨として示しているところである。」

 

として、大審院判例を踏襲し、業務性を否定しておりました。

 

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