業務上過失致死傷の業務性3

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弁護士の佐藤です。

 

今週もあっというまに金曜日です。

 

さて、本日も刑法に関する判例の中で、業務上過失致死傷の業務性が問題となった事案の判例をご紹介します。

 

本日ご紹介する事案は、米穀商が自分の営業のため利用するため運転免許を取ろうとして空地で2回程練習した後公道で軽自動3輪車の運転練習をしていて人を負傷させ死に致したというもので、実際運転免許証をとっていない場合にも、業務上過失致死罪は成立するのかが争点となった事案です。

 

この点、昭和38年3月29日福岡高裁宮崎支部判決は、

 

「所論は、被告人は本件事故発生までに自宅附近空地で二回練習運転をしたに過ぎないのに、自宅附近路上で数回運転し自動車運転の業務に従事していたとして、本件を業務上過失致死に問疑したのは事実を誤認し、ひいては法令の解釈適用を誤つた違法がある、というのである。しかし刑法二一一条の業務とは人がその社会生活上の地位に基づき反覆継続して行うもので、一般に人の生命、身体に危害を加える虞のある仕事を意味するが、自動車運転の如きは、その性質上人が社会生活上の地位に基いて行い、しかも人の生命、身体に危害を加える虞れのある行為にして、苟しくも反覆継続の意思でなされる以上業務ということを妨げないから、反覆継続する意思で自動車を運転する限り、たとえのそ運転が練習のためであつても、又過去において運転練習した回数が二回であり、場所が空地であつたに過ぎないとしてもその運転は業務に当るといわなければならない。原判決挙示の証拠によれば、被告人は本件事故当日の四日前である昭和三六年六月二三日頃融資先の・・・から本件軽自動三輪車を引取つて所有していたところ、これを自己の営む米穀商の業務に使用しようと考え、爾来運転免許をとるため肩書自宅から一○○米位離れた空地で二回程右軽自動三輪車を使用して練習運転し(練習運転した場所が自宅附近道路でなかつたことは所論のとおりである)、本件事故もかゝる練習運転を公道上で行つた際に惹起した事実が認められるから、反覆継続する意思で自動車を運転していたものというべく、原審が被告人の本件所為を業務上過失に該当するとして刑法第二一一条前段を適用処断したのはまことに相当であつて、原判決には所論の如き法令の解釈適用を誤つた違法は存しない。論旨は理由がない。」

 

として、業務上過失致死罪を適用した原審の判断を支持しました。

 

これまでも述べてきたように、業務上とは、人がその社会生活上の地位に基づき反覆継続して行うもので、一般に人の生命、身体に危害を加える虞のある仕事を意味すると定義づけられることが定着しており、上記定義からすれば、運転免許証の有無が業務性には関係なく、判決は妥当ということになるでしょう。

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