業務上過失致傷罪の業務性2

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弁護士の佐藤です。

今週はヘビーな会議が2つと、本日は、久しぶりの静岡地方裁判所沼津支部での裁判。

起案もたまり、なかなか神経がやられるヘビーな週です・・・。

 

で、本日も刑法に関する判例の中で、業務上過失致傷罪についての判例をご紹介しますが、本日は、経験者として、犬の飼育訓練係に雇われていたものが管理していた犬が誤って人にケガを負わせてしまった場合に、業務上過失傷害罪が成立するかが争われた事件です。

 

この点、第1審の東京地方裁判所は、

「刑法二一一条にいわゆる業務とは人が社会上の地位に基き継続的に従事する事務にして、その性質上通例人の生命身体に対する危険を伴うものを指称すると解すべきところ、犬の世話をその一部とする雑役的労務に従事することは本質的には女中、下僕のなすことと選ぶところはなく同法の業務とはいい得ないのである。」

とし、結論として、

「従つて、被告人の行為は同法二〇九条の通常過失に該当すべきであるが、被告人と相被告人・・とは刑事訴訟法二三八条一項の共犯者といい得ないところ、本件については告訴権者は・・をのみ告訴し、被告人に対しては告訴をなさないのであるから刑事訴訟法三三八条四号に則り本件公訴を棄却すべきものとする。」

としました。

 

ところが、これに対し、控訴審である東京高等裁判所は、

「刑法第二百十一条にいわゆる業務とは、原判決の説示するとおり、人が社会生活上の地位に基き継続して行う事務であつて、その性質上、人の生命身体に対する危険を伴うものを指すと解すべきところ、原審において適法な証拠調を経た原審証人・・・、同・・・の各証言並びに被告人及び原審相被告人・・・の原審公廷における各供述等を総合すれば、被告人は昭和三十一年一月十四日職業安定所の紹介により特に犬の飼育訓練に経験を有する者として・・・方に雇われ、同日より同月二十八日頃までは主として犬の給食を担当し、同月二十九日頃より本件の発生した同年二月四日に至るまでは、右給食の外、一日一回約二時間・・方の飼育犬グレートデン種二頭に引綱をつけてこれを運動させ、その他犬の手入れをしていたものであつて、被告人の・・家における主たる任務が右の如き犬の飼育訓練であつたことを認めることができ、しかも、本件の場合の如くグレートデン種のような巨大犬を飼育訓練するについては、屋敷内においてはこれを繋留し、街頭において運動させる際は、一回に一頭宛運動させるとか、犬に口輪をはめるとか、その他特別の注意を払わなければ、通行人等に危害を加える虞なしとしないのであり、そのためにこそ、被告人が専問的にこれらの事務に従事する飼育訓練係として水橋家に雇われたものであること叙上のとおりであるから、このような犬の飼育訓練係としての被告人の地位は、獣医師の免許の有無にかかわらず、まさしく叙上の意味における業務に該当すること明白である。しかるに原判決は、被告人が・・家に雇われた時獣医師の免許を有することを秘匿していたこと、その給与が安く獣医師としての待遇を得ていなかつたこと等を理由として、被告人は犬の世話をその一部とする雑役的労務に従事していたものと認定し、かかる労務は本質的に女中、下僕のなすことと選ぶところはなく、前記法条の業務とはいい得ないと説示して、本件を通常の過失致傷罪とみなし、親告罪につき告訴のけん欠することを理由として、公訴棄却を言い渡したのである。してみれば、原判決は証拠の判断を誤つて被告人の地位に関する事実認定上の過誤を犯し、ひいて法令の解釈適用を誤り、これを前提として、不法に公訴を棄却したものというの外はない。論旨はすでにこの点について理由があるから、爾余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。」

 

として、東京地方裁判所の原判決を吐きしました。

 

被告人が飼育訓練の経験を有する者であったこと、被告人が従事していた仕事にやはり人の生命身体に対する危険を伴うものであったことを重視したものといえます。

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