服役するために物を盗んだ場合

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弁護士の佐藤です。

 

本日は午後清水簡易裁判所で民事調停、その後、夜間は焼津で法律相談でございます。

明日は東京地方裁判所で長年関わっている行政事件、明後日は横浜地方裁判所で、これまた長年関わっている民事事件の尋問期日。

 

今週はなかなかハードです。

 

で、本日も刑法に関する判例をご紹介しますが、以前、お話したかもしれませんが、窃盗などの財産犯の場合、不法領得の意思が必要であり、不法領得の意思とは、権利者を排斥して他人の物を自己の所有物として経済的用法に従って利用もしくは、処分する意思と言われています。

 

そして、本日ご紹介する判例は、被告人が最初から自首するつもり、つまり、被告人あ刑務所で服役することを企図し、物をとった場合、窃盗罪が成立するのかが問題となった事例です。自首する際、被告人は、その物を持参しておりました。

 

この点に関し、広島地方裁判所昭和50年6月24日判決は、

 

「右事実関係によれば、被告人は一時的にせよ前記ステレオパツク等の物品に対する被害者の占有を侵害し自己の占有下においたことは、これを肯認せざるを得ないと考えられる。しかしそうだからといつて、検察官主張のようにこれにより直ちに被告人に不法領得の意思があつたとする見解にはにわかに左袒し難い。すなわち被告人は刑務所で服役することを企図し、当初から窃盗犯人として自首するつもりで右所為に及んだのであり、そのため直ちに一〇〇メートル以内の近接した派出所に被害品を携えて出頭しこれを証拠品として任意提出したのであるから、経済的用法に従つた利用又は処分の意思は全く認めることができないし、自己を窃盗犯人とするためまさしく他人の所有物としてふるまつたのであつて、自己の所有物と同様にふるまう意思があつたといえないことは明白である。のみならず当該物品に対する占有侵害があつたとはいえ、それはまさに一時的のことであつて、被告人の主観的意図は、即時被害者に返還し首服するというものではないが、即時近接の派出所に出頭自首し任意提出するというものと認められ、一時的にせよ権利者を排除する意思はなかつたと解すべきであり、事実被害品は右の過程を経て領置手続の後、即日被害者に仮還付により返還されているのである。そうだとすれば、被告人の前示所為につき不法領得の意思を認め難く、他に以上の認定を左右しうる証拠はない。」

 

とし、結論として、

「以上説示のとおり本件公訴事実は結局犯罪の証明がないことに帰するから、刑事訴訟法第三三六条後段により無罪の言渡をするものとする。」

と無罪を言い渡しました。

 

服役するために物をとったとに、それがために無罪となるとは、被告人ととっては皮肉な結論ですが、不法領得の意思の有無からするとこの結論は妥当といえます。もちろん、自首する際、遺棄したなどの事情があら場合には、別の結論もありえますが。

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