暴行後の領得4

015

弁護士の佐藤です。

 

今週もはじまりました。

 

さて、本日も刑法に関する判例のうち、強盗罪の成否に関する判例をみていきたいと思います。

 

本日は、前回お話したとおり、暴行後の領得に新たな暴行脅迫が必要かという論点で、不要とした判例をご紹介します。

 

まず、事案ですが、被告人は、強姦の目的っで被害女性に対し暴行を加え、被害女性をひほとんど反抗不可能の状態に陥れたが、被害女性が、「金をあげるから放してください。」と言ったので、被害女性かの体から離れて立ち上がると、被害女性も起き上がり、被告人に5000円を差しだしたので、これを受け取って逃走したというものです。

この点、第1審は、以下の理由で強盗罪の成立を否定しました。

「『盗取以外の目的で暴行脅迫を加え、相手方を反抗不能の状態に陥れた後始めて財物奪取の犯意を生じこれを実行した場合でもこの行為を強盗罪として評価しうるためには、その際新に右の反抗不能の状況を利用して金品を不法に領得する意思を生じその実行として金品を取得または提供させることを要するものというべく、右のような意思とそれに基く行為を伴わない限り単に右の機会に財物を持ち去つたり或は被害者自らが害悪を免れるため進んで提供した金品を受け取つてもそれは強盗罪の犯意と実行を欠くものであつて強盗罪は成立しない』との見解の下に、本件において被告人は最初強姦の目的でM子に暴行を加え同女を殆んど反抗不可能の状態に陥れたが、その時同女から『金をあげるから放して下さい』と云つて被告人の速やかな退去を求めたので、同女の差し出した五千円を受け取つて逃走したものであるが、右金員奪取し際収めて被害者の畏怖状態を利用して金員を提供させようと決意したこともまたこの決意に基き更に暴行脅迫をしたこともこれを認めるに足りる証拠ないし状況は認められない」

 

というものでした。

 

これに対し、控訴審である東京高等裁判所昭和37年8月30日判決は、

「しかし強姦の目的で婦女に暴行を加えたものがその現場において相手方が畏怖に基いて提供した金員を受領する行為は、自己が作為した相手方の畏怖状態を利用して他人の物につき、その所持を取得するものであるから、ひつきよう暴行又は脅迫を用いて財物を強取するに均しく、その行為は強盗罪に該当するものと解するのが相当である。(大審院昭和一九年一一月二四日判決、判例集二三巻二五二頁参照)原判決は右判例は犯人の作為した畏怖状態が財物強取の意思で惹起されたものでないことを看過し、強盗罪の客観的側面に類する行為があることに眩惑されて一挙に強盗罪に改当すると即断する誤りに陥つたものであると非難しているが、強姦の目的でなされた暴行脅迫により反抗不能の状態に陥つた婦女はその現場を去らない限りその畏怖状態が継続し、その犯人が速かに退去することを願つて金員を提供する場合においても、その提供は右畏怖状態に基く不任意な提供であることは明らかであつて、これを受け取る行為は即ち相手方が畏怖状態に陥つているのに乗じ相手方から金品を奪取するに外ならない。従つてその金品奪取の時において、先になされた暴行脅迫は財物を奪取する為の暴行脅迫と法律上同一視され、右犯人は刑法第二三六条にいわゆる(暴行又ハ脅迫ヲ以テ他人ノ財物ヲ強取シタル者)に該当するものと解すべきである。」

 

として、第1審判決をくつがえし、被告人に強盗罪の成立を認めました。

 

反抗抑圧の程度をはかるということは非常に難しく、主観的な面もありますが、判例がしめすように客観的に決めるというのであれば、前の行為が暴行脅迫ではなく、強姦という行為の特殊性を重視した結果なのでしょう。

 

ページの先頭へ