暴行後の領得3

015

弁護士の佐藤です。

 

金曜日です。

なんの予定もありませんが・・・。

 

で、本日は、午後尋問がありました。なかなか精神的に疲れる重い尋問でした。

 

さて、本日も刑法に関する判例のうち、強盗罪の成否が問題となった判例をご紹介します。前回同様、暴行後に領得の意思が生じた場合、あらたな暴行脅迫行為が必要かが問題となった事案です。

 

どういう事案かといいますと、被告人両名が通行中、1人が被害者と肩を触れあったことから、共謀の上被害者に暴行を加えて加療約2週間を要する腰背部打撲の傷害を負わせ、更に、被害者がほとんど抵抗しない状態にあることに乗じ、強盗を共謀の上、1人が被告人両名を暴力団員であると思い込み極度に畏怖してほとんど抵抗できない状態に陥っていた被害者の顔面を手拳で殴打する暴行を加えてその反抗を抑圧し、他の1人が被害者が連れの者に持たせていた現金等在中のポーチ1個を強取し、前記一連の暴行により被害者に対し加療約1か月間を要する上左右中切歯外傷性歯牙破折等の傷害を負わせたというものです。

 

この点、大阪高等裁判所平成元年3月3日判決は、

 

「本件のように、暴行を加えた後に財物奪取の意思を生じた場合には、その犯意発生後において、改めて強盗の手段として相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行、脅迫が行われない限り強盗罪は成立しないと解すべきであり、本件において、財物奪取の意思を生じた後の被告人両名の暴行、脅迫は軽度であって、反抗を抑圧する程度に達していないから強盗罪は成立しないのに、原判決は、財物奪取の意思が発生した後に、改めて強盗の手段としての暴行、脅迫が行われなければ強盗罪は成立しないとの正当な解釈を示しながら、その暴行、脅迫の程度が相手方の反抗を抑圧するに足りるものであるかどうかは、自己の先行行為によって作出した相手方の畏怖状態を前提において判断されるべきであり、したがって、必ずしも通常の強盗罪における暴行、脅迫と同程度のものであることを要しないとして、本件について、財物奪取の意思発生後は、被告人甲が被害者Bの顔面を手拳で数回殴りつけたことが認められ、その殴打の程度は、強盗の手段として通常用いられる暴行に比して弱いものではあるが、その犯意発生前の暴行、脅迫によって生じた被害者Bの畏怖状態を前提にすると、これをもって相手方の反抗を抑圧するに足る暴行、脅迫に値する行為があったものと評価できると判示して、強盗罪の成立を認めたが、右は事実を誤認したか法令の解釈適用を誤ったもので、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。」

 

という控訴趣旨に対し、

 

「強盗罪は相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行、脅迫を手段として財物を奪取することによって成立する犯罪であるから、その暴行、脅迫は財物奪取の目的をもってなされることが必要であると解される。従って財物奪取以外の目的で暴行、脅迫を加え相手方の反抗を抑圧した後に財物奪取の意思を生じ、これを実行に移した場合、強盗罪か成立するというためには、単に相手方の反抗抑圧状態に乗じて財物を奪取するだけでは足りず、強盗の手段としての暴行、脅迫がなされることが必要であるが、その程度は、強盗が反抗抑圧状態を招来し、これを利用して財物を奪取する犯罪であることに着目すれば、自己の先行行為によって作出した反抗抑圧状態を継続させるに足りる暴行、脅迫があれば十分であり、それ自体反抗抑圧状態を招来するに足りると客観的に認められる程度のものである必要はないものというベく、これと同旨の原判決の判断は正当である。」

 

として、前回紹介した判例同様、暴行脅迫が必要としながら、その程度は、通常の強盗罪に比し、弱いもので足りるとの判断をしめしました。 

 

もっとも、事例によっては、あらたな暴行脅迫は不要とする判例も存在します。

 

次回は、その不要論を示した判例をご紹介します。

ページの先頭へ