暴行後の領得2

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弁護士の佐藤です。

 

あいかわらずの風邪っぴきです。

 

そして、あっというまに1月が過ぎ去ってしまいました・・・。

 

気持ちを入れ替えてがんばりたいと思います。

 

さて、本日も前回に続き、強盗罪の成否が問題となった事例で、当初は財物奪取の意思がなく暴行を加えた後に至つて奪取の意思を生じ財物を取得した場合において、意思を生じた以降において暴行ないし脅迫に値する行為がなくとも、強盗罪が成立するか、それとも窃盗罪が成立するにすぎないかが争われた事案を紹介します。

 

この点、東京高等裁判所昭和48年3月26日判決は、

 

「論旨は事実誤認、法令の適用の誤りおよび量刑不当を主張するものであるが、これに対する判断に先だち、職権をもつて原判決の理由を調査するのに、原判決は、刑法二三六条一項の強盗罪の罪となるべき事実(第二の事実)として、『前記暴行に引続き、前記場所において、前記暴行により抵抗の気力を失つてその場にうずくまつている前記高橋に対し、『お前本当に金がないのか』と申し向けながら、同人の背広左内ポケットに手を差し入れてビニール製二つ折定期券入れを取り出したうえ、同人が抵抗できない状態にあるのに乗じて、右定期入れ在中の同人所有の一万円札一枚および腕時計一個(時価一、五〇〇円位相当)を強取し』と判示している。しかしながら、同条項の強盗罪は相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行または脅迫を手段として財物を奪取することによつて成立する犯罪であるから、その暴行または脅迫は財物奪取の目的をもつてなされるものでなければならない。それゆえ、当初は財物奪取の意思がなく他の目的で暴行または脅迫を加えた後に至つて初めて奪取の意思を生じて財物を取得した場合においては、犯人がその意思を生じた後に改めて被害者の抗拒を不能ならしめる暴行ないし脅迫に値する行為が存在してはじめで強盗罪の成立があるものと解すべきである(もつとも、この場合は、被害者はそれ以前に被告人から加えられた暴行または脅迫の影響によりすでにある程度抵抗困難な状態に陥つているのが通例であろうから、その後の暴行・脅迫は通常の強盗罪の場合に比し程度の弱いもので足りることが多いであろうし、また、前に被告人が暴行・脅迫を加えている関係上、被害者としてはさらに暴行・脅迫(特にその前者)を加えられるかもしれないと考え易い状況にあるわけであるから、被告人のささいな言動もまた被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫となりうることに注意する必要がある。しかし、いずれにしても、さらに暴行または脅迫の行なわれることを要することに変りはない。)。そして右の暴行または脅迫の行なわれたことは、もとより強盗罪の罪となるべき事実として具体的かつ明確に判示されなければならない。」

 

とし、本件では、

 

「しかるに、原判決をみると、被告人が奪取の意思発生前に加えた暴行により畏怖している被害者の懐中に手を差し入れて、抵抗不能の状態にある同人から金品を取り上げた事実は判示されているが、右の判示では、財物奪取の意思を生じた後にその手段として暴行はもとよりなんらかの脅迫が行なわれたことも判示されているとはいいがたい。あるいは、その中に『同人が抵抗できない状態にあるのに乗じ』とあるところからみると、そこに一種の暗黙の脅迫が行なわれたことを認定した趣旨であるかとも想像されなくはないけれども、そう解するには表現があまりに抽象的で罪となるべき事実の要素としての脅迫の判示があつたとするには不十分だといわざるをえないのである。また、被告人が被害者の懐中に手を差し入れる際『お前本当に金がないのか』と申し向けたことが判示されているが、これはその文言自体からも明らかなように、暗黙にもせよ被害者に害を加うべき脅迫の意思表示とみることはできない。これを要するに、原判決はその(罪となるべき事実)第二において強盗罪の成立に必要な暴行または脅迫の行為につきその判示が十分であるとはいいがたいのであるから、その理由が不備であるというのほかなく、控訴趣意に対して判断をするまでもなく、この点において破棄を免れない。」

 

としました。

 

 

前にもいいましたが、この争点には、様々な学説が存在するところですが、上記判例は、当初は財物奪取の意思がなく他の目的で暴行または脅迫を加えた後に至つて初めて奪取の意思を生じて財物を取得した場合、犯人に改めて被害者の抗拒を不能ならしめる暴行ないし脅迫に値する行為が必要としながらも、その程度は、通常の強盗罪の場合に比し程度の弱いもので足りるという立場に立っています。

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