暴行後の領得

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弁護士の佐藤です。

 

先日から春の陽気ですね。

 

あいかわらず、風邪気味ですが・・・。

 

で、本日も刑法に関する判例のうち、先日からの続きで強盗罪に関する判例を見ていきたいと思います。

 

まず、事案ですが、被告人は、当初財物奪取とか関係なく、被害者に暴行を加えて転倒させ、さらに、他の人が被告人に加勢して、倒れている被害者に殴る蹴るの暴行を加えたため、被害者は一時気を失い、意識は間もなく回復したものの、全く反抗の気力もなく、身動きをするとさらに暴行を受けることを恐れ動きもせずぐったりとなったままでいました。他の人が立ち去った後、被告人は被害者が気を失っているものと思い、被害者が腕に付けていた時計をこの機会にとってもかまわないだろうとの考えから腕時計を外し取って奪いました。

 

 

この点、第1審は、強盗罪の成立を認めましたが、控訴審である高松高等裁判所昭和34年2月11日判決は、以下のように判示しています。

 

「元来強盗罪は相手方の反抗を抑圧するに足る暴行若しくは脅迫を手段として財物を奪取することによつて成立する罪であるから、暴行脅迫後に初めて盗罪犯意を生じた場合その所為が強盗罪となるためには、犯人のその後の言動が暴行若くは脅迫を用いたものと評価される場合又は暴行脅迫を手段としたのと同視すべき場合でなければならない。他の目的で先に加えた暴行脅迫により被害者が畏怖して居るに乗じこの機に財物を奪取しようという意図のもとに金品を要求し或は身体にさわつて財物を奪つたような場合は(参考最高裁昭和二四・一二・二四判決)、その申し向けた言辞や身体にさわる等の挙動をすること自体が被害者を通常畏怖せしめるに足る脅迫と評価すべきであるし、又他の目的で暴行の継続中被害者が畏怖のあまりその暴行から免れんがためにその場で自ら進んで提供を申し出た金品を取得したような場合にも強盗罪の成立を妨げないけれども、その所以も亦初めから財物奪取の目的で暴行脅迫を加えて強取する場合とその評価においてこれを別異に解すべき何等の理由が存在しないからである(参考大審院昭和一九・一一 ・二四判決)。」

 

とした上で、

 

「然るに本件において被告人は・・・が失神して居るものと思い今取つてもわからねと考え無言のまま同人の腕から腕時計を外し取つたのであるから、畏怖状態を利用するという意思もないし又これに乗じたわけでもなく、財物奪取のために暴行脅迫を用いたものと評価さるべきではないし亦これと同視すべき場合でもない。それは恰も喧嘩の相手が犯人の打撃によつて死亡又は失神した際、立去るに及んでふと物慾を起し死体又は失神している身体から懐中物を取つたというのと異るとところはなく、大い意味では抗拒不能に乗じて取つたとはいえても強盗罪が成立するものではない。本件は単なる窃盗罪を以つて問擬すべきものと解するのが相当である。」

 

とし、強盗罪の成立を否定し、窃盗罪の成立を認めました。

 

この争点に関しては、学説上も各説あるところであり、その後の判例も多くあるところです。

 

次回も、この点に関する判例をご紹介したいと思います。

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