慰謝料~離婚後の生活環境~

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弁護士の佐藤です。

 

あっという間の金曜日でございます。

 

本日は富士支部で調停がございました。

 

 

 

さて、先日から始まっている慰謝料について、本日も判例の紹介をしていきたいと思うのですが、本日も離婚に関するお話です。

 

 

本日は、少々特殊な事案でして、離婚の慰謝料の額を考える上で、慰謝料を受け取る側の生活環境が増減の事由になるかというのが争点です。

 

 

どういうことかといいますと、日本人の夫と、中国人の妻という夫婦で、夫の暴行及び夫が窃盗をしたことを理由に妻が離婚を請求し、その後、妻が中国に帰ってしまったという事案で、物価が低いなどの中国での生活環境が慰謝料に影響するかという問題です。

 

 

この点、秋田地方裁判所大曲支部平成5年12月14日判決は、

 

 

「夫婦間の暴行はそれ程重大な状況にあったとは言い難いし、また窃盗事件自体も被告は常習であったとは言い難いところであるが、婚姻して中国から単身来日、被告以外に頼るべき者のいない原告の立場からすれば、これらの事由により相当のショックを受け、婚姻生活に失望し、離婚を求める気になったとしてもやむをえないものと考えられる。従って、被告は原告に離婚を伴う慰謝料を支払うべき義務がある。そこで、その場合の慰謝料額についてであるが、前記1ないし3で認定したところによると、慰謝料としては、二〇万円とすることが相当である(なお、付言するに、離婚慰謝料は、離婚したことにより受けた精神的苦痛を慰謝するものであるから、離婚した者かどの地で慰謝料を費消することが予定されているか、いい換えると、離婚を求めた者が離婚当時どこで生活していたかを考慮することは当然である。)。」

 

 

として、生活環境を考慮するという立場にたちました。

 

 

ところが、この裁判は控訴審がありまして、仙台高裁秋田支部平成8年1月29日判決は、

 

「そこで、本件慰謝料額の算定についてであるが、離婚慰謝料は、離婚したことにより受けた精神的苦痛を慰謝するものであり、離婚した者がその離婚調停成立当時どこで生活していたかとの点も考慮すべき一事情であることは否定できない。しかし、本件慰謝料が日本における婚姻生活の破綻に基づき現に日本において請求されていることに照らすと本件慰謝料額を算定するに当たっては、控訴人の中国に帰国後の同地の所得水準、物価水準如何は、逸失利益の算定の場合と比較してさほど重視すべきものではなく、かえってこれを重要な要素として慰謝料の額を減額すれば、被控訴人をして、一般的に日本人である妻と離婚した者の支払うべき慰謝料の額と対比し、不当に得をさせる結果を生じ、公平を欠くこととなると考えられる。当裁判所は、以上の理由により、前記で認定した事実関係(控訴人が既に中国に帰国している事実も当然に考慮して)のもとにおいては、本件で被控訴人に負担させるべき慰謝料の額は100万円をもって相当と認めるものである。」

 

として、離婚時に生活環境を考慮することに一定の理解を示しつつも、公平の観点から、慰謝料の額を100万円に増額しました。

 

 

高裁判決が示すように、慰謝料の原因事由が、日本における婚姻生活の中にある以上、離婚後の生活環境は、考慮するにしてもさほど重要視することではないし、日本人妻との公平の観点からも、高裁判決が妥当と思われます。

 

 

というわけで、本日も離婚がらみの慰謝料に関するお話でございました。

 

 

週末をよいお天気になるようですが、くれぐれも熱中症にはお気を付けの上、よい週末をお過ごしください。

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