慰謝料~相隣関係⑤~

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弁護士の佐藤です。

 

あっという間の金曜日でございます。

 

 

本日は富士支部での調停のあと、交通事故案件での現地調査などを行ってきました。

 

 

で、本日も相隣関係で問題となった慰謝料に関する判例をご紹介していきたいと思うのですが、本日は悪臭に関する判例です。

 

 

具体的には、原告らは夫婦ですが、個人または会社名義で建物の解体工事等を業とする被告らが、原告宅から約470メートル離れた所有地に建物解体の際に排出された建設廃棄物を搬入して、産業廃棄物の野焼きをはじめたため、野焼きによって生じる悪臭・煤煙等によって、重大な健康被害・生活被害を受け、野焼きは違法であるとし、被告らに対して100万円の慰謝料を請求したというものです。

 

 

この点に関し、津地裁平成9年6月26日判決は、

 

 

「現代社会においては、各個人や企業が、自らの利益や利便を求めて行動する結果、互いに近隣住民に対して様々な影響を及ぼすことは不可避であり、他の者の行為によって自らの利益が影響を受けることも一定の限度ではこれを受忍せざるをえない場合もある。しかし、こうした場合であっても、各住民の健康及び日常生活の平穏の維持は、人として日も重要かつ基本的な利益なのであるから、最大限尊重されることが要求されているというべきである。」

 

とした上で、

 

「これを本件について考えるに、被告らが野焼きを行っていた当時、野焼きを直接示止する法律は未だ整備されていなかったものの、産業廃棄物の野焼きが有害物質を排出する危険性を有していることは周知の事実であり、厚生省としても平成二年六月当時から野焼きの禁止を日導していたのであるから、野焼きを行う者としては当然に、野焼きが付近住民の健康及び日常生活の平穏を不当に侵害することのないよう配慮することが要求されていたというべきである。しかも、本件で問題となっている上野ニュータウンは元来、空気がきれいで自然環境に恵まれた謐な住宅地であり、原告らを初めとする住民は、その自然環境を求めてニュータウン内に土地を購入しているのだから、このような住宅地の付近で野焼きを行おうとする被告らは、特に付近住民に不当な被害を及ぼさないよう相応な配慮が求められていたものである。」

 

 

としました。

 

 

そして、

 

 

「しかるに、被告らは、上野ニュータウンにほど近い本件土地上で、連日のように塩化ビニールやプラスティックなどの難燃性廃棄物やコンクリートがらなどの不燃性廃棄物の混在する建設廃棄物を大量に焼却し、煤煙や強い悪臭を大量に発生させて、原告らに頭痛・眼痛・喉の痛み・息苦しさ・不眠等の健康被害を生じさせたのであり、特に原告らが被告らに対して初めて苦情を申入れた平成三年七月一〇日以降は、野焼きが原告ら付近住民の健康・生活に重大な影響を与えていることを知りながら、野焼きを継続したものである。被告らは、原告らの被害の実態を知った後も、上野市営焼却場に可燃性廃棄物を持ち込む等の回避日置を取ることもせず、平成三年八月及び九月に二度にわたって行われただ政指導にも従わずに野焼きを続行したのであり、その結果、原告らが平成四年七月三日までの間連日のように煤煙や悪臭にさらされて右のような健康被害を被ったことを考えれば、平成三年七月一〇日以降の本件野焼きは、社会生活上、受忍すべき限度を超えた違法なものであるというべきである。そして、被告らの野焼きと原告らの被害との間には、相当因果関係が認められるから、被告らは民法七〇九条及び七一九条に基づいて、連帯して、原告らが被った精神的苦痛に対する損害賠償責任を負担すべきである。」

 

 

として、上記野焼きを、受忍限度を超えた違法な行為と認定しました。

 

 

もっとも、慰謝料の額については、

 

「原告らが被告らの野焼きによって、頭痛・眼痛・喉の痛み・不眠・息苦しさ等の健康被害や建物が煙で黒ずむ等の生活被害を被ったことは前記二(二)(3)のとおりである。そして、原告らの精神的損害を算定するにあたっては、前記二において認定した各事実に加え、原告らが被害を訴えてから一年以内には野焼きが終了していること、原告らの被害内容としても具体的な病気の発生等までは認められないことを考慮し、その精神的損害に対する慰藉料としては、原告それぞれについて各金三〇万円が相当であるというべきである。」

 

 

として、30万円の限度で慰謝料を認めました。

 

 

数字の根拠がよくわかりませんが、具体的な病気の発生がないとはいえ、ある程度の健康被害とその期間を認定している以上、交通事故等の他の事案と比べて金額は低いかと思いますが、相隣関係の中でも悪臭の慰謝料は他の事案でも低額なものが多いといえます。

 

 

 

というわけで、本日は悪臭に関する判例をご紹介しました。

 

 

みなさま、よい連休をお過ごし下さい。

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