慰謝料~相隣関係③~

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弁護士の佐藤です。

 

久しぶりのよい天気です。

 

さて、本日も相隣関係で問題となった慰謝料に関する判例をみていきたいのですが、本日は、眺望に関する判例です。

 

 

具体的には、被告が、原告宅の敷地の西側に隣接する土地を取得し、その土地上にマンションの建築に着手したところ、原告宅は、周囲を農地や雑木、住宅に囲まれており、原告宅からは、その北側及び西側に市街地等を一望できていたのに対し、被告のマンションが建築されると、原告宅からの眺望は、完全に阻害される結果、原告は、甚だしい圧迫感や威圧感を受け、健康的な生活が損なわれることになるとして、損害賠償請求をしたというものです。

 

 

この点に関し、大阪地裁平成10年4月16日判決は、まず一般論として眺望の利益につき、

 

「一般に、眺望は、これを見る者に、開放感や安堵感、美的満足感を与えるものであって、生活上少なからず価値を有するものであって、個人が特定の土地や建物を所有ないし占有することによって得られるところの、土地や建物の所有・占有と密接に結びついた生活利益ということができる。」

 

とし、

 

「もとより、眺望の利益は、観望する者と観望の対象との間に遮断物が存しないという偶然の事情によって生じるものであって、周辺地域における開発等客観的状況の変化によって自ずと変容ないし制約を受けざるを得ないものであるから、土地や建物の所有者ないし占有者が排他的独占的に享受しうる利益ということはできず、他人の行為によって眺望に変容がもたらされても、当然にその排除を求めたり損害賠償をなしうるだけの内実を有しているものとはいえない。」

 

 

としながらも、

 

「特定の場所の眺望の点で特別の価値を持ち、眺望の利益の享受を目的としてその場所に建物が建てられた場合のように、当該建物の所有者ないし占有者による眺望の利益の享受が、社会通念上からも独自の利益として承認されるべき重要性を有すると認められる場合には、眺望も、法的保護の対象となるということができる。」

 

 

とした上、本件では、

 

「本件居宅は、その北側及び西側の土地より小高い丘の上に位置し、本件居宅から北側及び西側に向けての眺望には、前記二判示のとおり、法的保護に値するだけの重要性を認めることができたが、本件マンション建築工事の結果、遅くとも平成一〇年一月一日には、前記一6認定のとおり、西側に向けての眺望は、本件マンションの東壁面以外には空が見えるだけの状態(左右方向には、一〇〇パーセント視野が遮断され、上下方向には、約四五度の角度で見上げない限り空も見えない状態)になり、また、北側に向けての眺望も、参番館の東壁面により、視野の二分の一ないし三分の一が遮断されることになったものである。本件マンションの建築により、本件居宅から南側及び東側に向けての眺望が何ら影響を受けないことを考慮しても、本件居宅から北側及び西側に向けての眺望こそが、一般的な都市景観とは異なって法的保護に値するものであることに鑑みると、右眺望阻害の程度は、決して軽微とは評価できない。また、本件居宅とマンションとの距離、本件マンションの大きさ等に照らすと、原告が本件居宅において生活するにあたり、本件マンションより威圧感や圧迫感を感じることも想像に難くない。」

 

とし、さらに、

 

「本件居宅周辺地域の地域性に鑑みても、右周辺地域は、第二種中高層地域に指定され、今後ある程度の都市化が予想されるとしても、現状においては、一〇階建を超える大型建築物は周囲に見当たらず、未だに竹林、雑木林、田畑等が残る地域であるというのであるから、本件マンションは、少なくとも現時点においては、周囲の環境と調和した建築物とはいい難く、ましてや、原告が本件居宅を建築した昭和六一年当時において、本件マンションのような大型建築物が建築されることを予見すべきことを、一般人に期待するということはできなかったといわねばならない。」

 

 

などとして、本件での原告の眺望の利益を認めました。

 

 

そして、損害については、

 

 

「原告は、被告の本件マンション建築による眺望阻害によって、従前享受しえた眺望による安堵感や充足感を得ることができなくなったばかりか、威圧感や圧迫感を感じるようになったもので、そのことによる原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の額としては、前記一6認定の眺望阻害の程度その他諸般の事情に鑑み、一二〇万円と認めるのが相当である(そもそも、眺望阻害による生活利益の侵害は、日照、騒音、臭気等による生活利益の侵害に比べて切実なものとはいえないし、住居地域においては、一般に、住居からの眺望が他人の建物等によって一定の制約を受けることは当然予定されていること等に鑑みれば、眺望阻害による慰謝料の額は、右の程度にならざるをえない)。」

 

 

として、慰謝料を120万円の限りでみとめ、その余の財産的損害については損害をみとめませんでした。

 

 

眺望が問題となった事案では、そもそも、眺望の利益を認めないものも少なくなく、本件は、眺望の利益を認めた上、眺望阻害による生活利益の侵害は、日照、騒音、臭気等による生活利益の侵害に比べて切実なものとはいえないとしながらも、相隣関係事案の中では、割と高額な慰謝料を認めており、参考になる事案といえます。

 

 

が、しかし、この判決については、控訴審がありまして、その判決は次回ご紹介したいと思います。

 

 

というわけで、本日は眺望に関する判例をご紹介いたしました。

 

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