慰謝料~婚約破棄③~

003

弁護士の佐藤です。

 

久しぶりに、がっつり雨ですね。

 

さて、本日も慰謝料に関する判例をご紹介していきたいと思いますが、本日も前回同様、婚約破棄に関するお話です。

 

 

まず、事案ですが、日本国籍の男性である被告が、韓国籍の女性でである原告と婚約しながら、韓国人に対する民族的差別故に、結婚式の直前になつて婚約を破棄したので、その行為が不法行為に該るとして、慰藉料500万円及び財産上の損害約90万円等の支払を求めたというものです。

 

 

この点、大阪地裁昭和58年3月28日判決は、

 

 

「被告・・は原告と婚約し、結婚の準備を進め、挙式の日も切迫していたのに、その招待者に対する案内状が完成しても自らは仲人役の恩師に対しても、会社の上司や親戚に対してもこれを送らなかつたのであり、右の案内状が出来上り手元に届いた時点においては、原告側と被告ら側との間に格別結婚式を挙行するのに障害となるべき致命的な感情の対立や行違いが発生していたわけではないこと等を考え合わせると、被告・・自身、実は原告との結婚式を挙行することを迷い、躊躇していたと推認されてもやむを得ない。そして、就職が決まつたら原告と結婚しようと考えていた被告・・が、就職後逆に、結婚したら会社を辞めて司法試験を受けようとの考えを持つに至つたこと及びかつて原告に対し朝鮮人と結婚すれば出世できなくなる等と言つたことがあることからすれば、被告太郎は、朝鮮人である原告と結婚する以上会社に留つていても将来の昇進、同僚との付合い等が思うようにならないのではないかとの不安を抱き、会社を辞めて司法試験を受けようと考えたものと推認し得るところ、試験に必ず合格するとの保障もなく、会社を退職すると経済的に極めて苦しい状況に陥ることを認識するに及んで、二者択一を迫られ、これが原因となつて、前叙のとおり、原告との結婚自体を迷い躊躇するようになつたと推認することができるのであつて、〈証拠〉によれば、右の迷いと躊躇は、朝鮮人に対する日本人の歴史的民族的感情が、意識無意識のうちに時としてなんらかの社会的制裁の形で顕在化するということについての虞れのしからしむるところということができる。」

 

 

とした上で、

 

 

「基本的には、原告との結婚についての前記の迷いと躊躇の気持を次第に増幅させ、最終的にこれを婚約破棄という形に顕わしたものということができるのであつて、その経過に照らし、右の婚約破棄は、原告に対する被告・・の不法行為と認めるのが相当である。」

 

 

とし、金額については、

 

 

「前認定の婚約に至る経過、挙式直前の婚約破棄であつたこと、原告の年齢、原・被告双方の家族の関り合い、被告・・の年齢及び社会的地位その他諸般の事情を総合し、被告太郎の右不法行為により原告の被つた精神的苦痛を慰謝するのに必要な慰謝の額は、一五〇万円をもつて相当と認める。」

 

としました。

 

 

本件は、直接的ではないにせよ、民族的差別による婚約破棄を認めた数少ない事案であるといえますが、認定金額については、各事情の総合考慮の中で、ことの発端が、原告の父親が被告を殴打することにあったこと等の特殊事情を加味し、上記のような金額になったものと思われます。

 

 

というわけで、本日も婚約破棄に関する慰謝料の判例をご紹介いたしました。

 

 

みなさま、よい週末をお迎え下さい。

ページの先頭へ