慰謝料~婚約破棄②~

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弁護士の佐藤です。

 

本日も午前午後と裁判が入っております。

 

さて、本日も慰謝料に関する判例をご紹介していきたいと思うのですが、前回につづき、婚約破棄に関する判例をご紹介いたします。

 

 

まず事案ですが、原告は、被告である男性と見合いし、数回交際の後、縁談がまとまり、結納をとりかわして婚約し、挙式の日取りも決定しており、さらに、原告は、その間、挙式、披露宴の準備を着々と進める一方、嫁入道具やその他衣類、身の廻り品を買いととのえ、勤務先を退職し、貸衣裳の選定、新婚旅行の準備、披露宴の列席者の決定、記念品の選定、招待状の発送などと、絶えず男性とその母と行動を共にしていたところ、突然男性及びその母が仲人を通じ、何の理由も告げずに電話1本で、原告に対し婚約を破棄する旨通告したというものです。

 

 

この事案に対し、徳島地裁昭和57年6月21日判決は、

 

 

「被告らは、原告と被告・・との婚約を、その結婚式の直前、披露宴の招待状の発送も行なわれ、新婚旅行の準備もととのい、ともに婚礼写真の前写しも行ない、もとより原告において嫁入道具の購入も完了し、いわんや嫁入道具として持参すべき物品について被告ら自らあれこれと要求を呈してこれをのませていたのに、右の嫁入道具が運び込まれるまさにその前日において、かねて原告の容姿等について抱いていた不満感に抗しきれず、他人を介し、電話一本で断定的に破棄したものである。その又前夜には原告に対し、被告・・が真意はいざ知らず、これからは二人で力を合わせてやつて行こうなどと言つて、婚姻に対する期待感を抱かせていた。その他前認定の各事実を考慮すると、両者の間に性的交渉がなかつたこと、婚約成立までの日数が短かかつたこと等に配慮しても、本件婚約破棄による原告の精神的損害を慰藉するためには四〇〇万円が相当であるから、被告らには右金員の支払義務がある。被告らは原告が婚約破棄後被告太郎の勤務先などで被告らの悪口をふれ回つた旨主張するが、これは被告らの不法行為後の事実であつて、本件慰藉料の額を定めるにつき勘酌すべき事実ではなく、被告らがこれを原因として別個の請求をしたものとも解せられない。」

 

 

として、400万円の慰謝料を認めました。

 

 

この判例で注目すべきは、被告が破棄をした当事者だけでなく、その母をも共同不法行為者として訴え、請求が認められていることと、いわゆる嫁入り道具購入費が損害となるかにつき、

 

 

「婚約破棄の場合の嫁入道具の購入費に関しては、婚約を前提として事実上支出した財産的損害であるとして、これの全額を原告の損害額とすべきであるとする見解が存するが、支出による損害額を直ちに支出額それ自体に求めることは相当でない。さればと言つて、嫁入道具が婚約不履行によりその用途を失つて無駄なものとなつたとしても、原告においてこれを自己の手許に残存せしめているときは未だ現実に損害を生じたものとは言えず、又はその具体的損害額が不明であるとして、いずれにせよ支出による損害の賠償請求はこれを失当とするとの見解(高松高判昭和三〇年三月三一日・下民集六巻六二二頁)も又到底これを採ることができない。なせなら被告らの不法行為である婚約破棄によつて傷つけられた法益たる原告の前掲生活上の利益(権利)における損害とは、もとより物質世界における変化ではなくて、原告の全体財産という利益、態における不利益なる変化にして且つ侵害された権利によつて直接に保護されるべき範囲内のものを指称すべきものであり、又このように全体財産に関する差額仮定に依存した損害概念についてもこれが全ての人によつて平均的に認められる価値を評価するところの、いわゆる客観的損害評価を加えることによつて、その具体的損害額を算出することが許される。そしてこのような損害は侵害的結果が発生した時点において直ちに賠償請求権によつて取つて替えられるものであるから、嫁入道具がその後他に処分されなければ損害もなく損害額も不明だとすることにはならない。而してこの立場における財の評価とは有用性の見積り評価を言うものであるところ、嫁入道具は、その他の日用家財道具などとは異なつて、予期される婚姻生活という特定の目的のために購入されたものであり、その有用性が特定の婚約によつて規定される存在であるから、これに関する損害の評価も日用品一般の市場価値の下落と同列にとらえられるものではなくて、常に特定婚約の態様、殊に客観的にみたその履行の確実性に配慮したものでなければならない。そうすると道具入れの前日にまで到つていた本件婚約の程度を考慮し、これに公知の事実である諸道具類の市場価格の下落等の事情を総合して考慮すると、原告は嫁入道具の購入によつてその各支払額の七割に相当する額の損害を蒙つたものと解するのが相当である。」

 

として、嫁入り道具の7割に相当する額を損害として認めました。

 

 

従来の判例では、嫁入り道具を損害として認めないと考えられていたため、その判断をしたという点では、画期的なものかもしれませんが、その理由付けは、正直、よくわからない面もあります。

 

というわけで、慰謝料の話からそれてしまいましたが、本日も、婚約破棄による慰謝料の判例をご紹介しました。

 

 

午後も気合いをいれてがんばります。

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