慰謝料~名誉毀損~

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弁護士の佐藤です。

 

 

さて、本日も慰謝料に関する判例をご紹介していこうと思うのですが、前回までがプライバシー侵害が問題となった事案であったのに対し、本日は、名誉毀損が問題となった判例をご紹介していきたいと思います。

 

 

プライバシー侵害もそうでしたが、名誉毀損の慰謝料の額に関しては、交通事故の場合のような相場、基準があるわけではなく、数字の根拠も正直よくわからないものが多くて、また、慰謝料を認めるにしても極めて低額な印象をもっているのですが、ここ数年前から、若干、金額が上がるようになった気もしております。

 

 

明確に述べている判例があるかどうかしりませんが、10数年前と比べて、現在は、インターネットの普及により、情報が拡散されやすく、一度拡散されると修復ができないというのも背景としてはあるのではないでしょうか。

 

 

で、名誉毀損の特徴としては、プライバシー侵害同様、媒体が出版社などのマスコミがほとんどで、表現の自由との調整が問題となることが多いのですが、本日ご紹介する事案は、看板の設置による名誉毀損成立の有無が問題となりました。

 

 

具体的には、被告が、「・・・・教授は血友病患者1800人『殺人政策』の責任を取れ!」、「・・氏・・・社からワイロ受け取り発覚」などと記載し、原告の顔写真を載せた立て看板を、大学キャンパス構内に掲示したことにより、原告の名誉及び名誉感情が毀損されたとして、原告が、被告に対し不法行為に基づき、損害賠償及び謝罪文の作成、交付を求めたというものです。

 

 

この点、東京地裁平成12年11月13日判決は、まず、名誉毀損の成否について、

 

「原告が殺人政策を選択し、執行したとの事実が真実であると認められるためには、原告が、エイズ被害の発生を認識して、被害者が死亡することを表象、認容していたにもかかわらず、エイズに関する厚生省としての政策を実行したとの事実が存在する必要がある。」

 

とし、

 

「しかし、本件全証拠を検討するも、原告において、血友病患者がエイズに感染する危険性があるにもかかわらず、それもやむを得ないとして、これを放置したとまでの事実があったと認めるに足りる証拠はなく、また、被告において、右事実が真実であると信じるにつき相当な理由があったと認めるに足りる証拠もない。」

 

とした上で、

 

「確かに、前記認定のとおり、血友病患者のエイズ被害の実態は悲惨なものである。しかし、だからといって、原告の行為をもって、殺人政策の執行ということは、やはり行き過ぎといわざるを得ず、これを正当化する事由が存在しない本件にあっては、原告に対する名誉毀損が成立するというべきである。」

 

 

としました。

 

 

そして、慰謝料の額については、

 

 

「被告は、本件各立て看板の掲出を二年以上の長期にわたって多数の場所で行っていること、本件各立て看板の掲出内容は、『殺人政策』などと原告に対する誹謗中傷の程度が強いものであることなどその他本件に顕れた一切の情を考慮すれば、原告が本件各立て板掲出行為によって被った精神的損害は二〇〇万円と評価するのが相当である。」

 

 

としました。

 

 

また、名誉毀損の事案では、損害賠償請求のほかに、謝罪広告を求めることができるという点に、他の事案とは異なる特徴があるのですが、本件も謝罪広告の点について、

 

 

「被告の本件各立て看板掲出行為により、原告の社会的評価は金銭賠償のみでは回復できないほど著しく低下したと認められる。よって、原告が被った精神的苦痛を慰謝するには、被告が原告に対し、別紙謝罪文目録1記載の謝罪文を作成、交付する必要があると認められる。」

 

として、謝罪広告を認めました。

 

 

というわけで、本日は、名誉毀損に関する判例のご紹介でした。

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