慰謝料~名誉毀損⑧~

006

弁護士の佐藤です。

 

あっという間の金曜日です。

 

さて、本日も名誉毀損に関する判例をご紹介していきたいと思うのですが、本日も少々複雑な事案です。

 

 

具体的には、生命保険会社である原告が、元常務取締役であった被告に対し、被告が大衆週刊誌等の記者に原告の社外秘の情報・資料等を提供した結果記事が掲載され、名誉が毀損され損害を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償を請求したという事案です。

 

 

この事案の特殊性は、記事の掲載ではなく、元取締役の情報漏洩行為と名誉毀損との間に因果関係が認められるのかというものです。

 

 

この点に関し、東京地裁平成11年2月15日判決は、被告の義務につき、

 

 

「常務取締役であり、在任中であれは、職務上知り得た会社の内部情報について、取締役の忠実義務の一内容として守秘義務を負うことは当然である。そうだとすれば、・・は、役員退任後も、信義則上、在任中に知り得た会社の内部情報について守秘義務を負うと言うベきであり、このように解さなければ、当事者の信頼関係を基調とする委任契約の趣旨は全うされないことになろう。」

 

 

とした上で、

 

 

「・・は、表現の自由及び千代田生命の公共性を理由に、本件情報漏洩には違法性がないと主張するが、本件は、退任した取締役が在任中に職務上知り得た会社の内部情報について守秘義務を負うかどうかの問題であるから、守秘義務違反と認められる以上、本件情報漏洩は違法と言わざるを得ない。」

 

としました。

 

 

そして、

 

「本件各記事が・・・・の醜聞を取り挙げたものであり、その内容が・・・・の名誉信用を毀損することは明らかである。そして、本件情報漏洩が本件各記事の執筆につながり、これが・・・・の名誉信用の毀損という結果を招来したことは否定すべくもないから、本件情報漏洩と本件各記事による・・・・の名誉信用の毀損との間に因果の連鎖があることは疑いがない。問題は、両者間にメディアの独自の判断(編集権)が介在することにより因果関係が否定されるかであるが、情報提供者が提供した情報内容に従った記事が掲載される蓋然性が高く、かつ、情報提供者自身がこのことを予測し容認していた場合には、情報提供行為と記事による名誉毀損との間の相当因果関係は存在すると言うべきである。」

 

 

として、一定の要件を満たす場合には、情報漏洩自体に名誉毀損との因果関係を認めました。

 

 

その上で、慰謝料については、1000万円という高額な慰謝料を認めました。

 

 

 

情報提供者と名誉毀損行為との間の因果関係については、判例上、判断が分かれるところであり、本件は、因果関係を認めた参考になる判決といえますが、前述したとおり、本件は被告が原告の元取締役であり、守秘義務違反の程度が大きかった点が影響されたのではないでしょうか。

 

 

というわけで、本日も名誉毀損に関する判例のご紹介でした。

 

 

今週末もお天気が心配ですが、みなさま、よい週末をお過ごし下さい。

ページの先頭へ