慰謝料~名誉毀損⑤~

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弁護士の佐藤です。

 

今週もはじまりました。

 

なんと、もう7月です。下半期です。

 

 

で、本日も名誉毀損がらみの慰謝料の関する判例をご紹介していきたいと思うのですが、本日の事案は、被告は、「危険な〇〇〇信用金庫!!」と題する文書を江戸川区篠崎町周辺の原告の取引先、同業信用金庫等多数の者に配付したことにより原告の社会的評価が低下したとして、損害賠償請求をしたものです。

 

この点に関し、東京地裁平成7年5月30日判決は、

 

 

「被告が平成六年八月二四日ころ本件文書を原告の取引先等多数の者に配付したこと及びその後平成七年三月までの間にこれと同趣旨の文書を右多数の者に配付したことにより、原告は、信用金庫としての社会的評価を傷つけられたものと認められる。」

 

として、原告の社会的評価の低下を認めた上で、

「被告が右のような原告の社会的評価を傷つける文書を配付した場合においても、そのような文書を配付することについて違法性又は責任を阻却する事由があるときは、不法行為は成立しないのであり、その要件としては、その文書の内容が公共の利害に関するものであり、被告が専ら公益を図る目的でこれを作成、配付したこと、及びその内容が真実であり、又は被告がその内容を真実と信ずるについて相当な理由のあることが充足されることが必要である。」

 

 

として、違法性ないし責任阻却事由の一般論を展開したのち、

 

「しかし、そもそも右文書は、原告の役員その他の幹部職員について、悪知恵を振り絞り、原告である信用金庫を喰い物にし、客の金を湯水の如く荒く使う、寄生虫幹部である等の抽象的で侮辱的な表現を用いて記述したものであり、その表現自体からして、公共の利害に関する記述とは認めがたく、また、専ら公益を図る目的で作成、配付したものとも認めがたい。加えて、被告の提出する書証は、被告作成のチラシや原告と元原告従業員の間の訴訟の訴状、答弁書の写し、被告が作成した原告の顧問弁護士に対する懲戒申立書の写し等であり、右文書に記載した内容の主要な部分が真実であることを裏付ける性質のものではなく、また、被告の申請により採用した被告本人尋問においても、右文書に記載した内容が調査の結果事実であったとの被告の認識を強弁するのみであり、右文書に記載した内容の主要な部分が真実であることを裏付けるに足りる具体的な供述はない。」

 

とし、

 

「本件において、特に重要なのは、当裁判所が平成六年三月二三日、本件文書の配付禁止、執行官保管の仮処分命令を発し、これを被告に送達しているのに、被告は、右執行官保管の処分を免れるために、本件文書を第三者に売却した形を作り(財産的価値の乏しいそのような文書を真に七〇万円余りもの代金で買い受ける者がいるとは考えがたい。現に、右文書の買受人と称する者は、右買受けの目的を問いただすことを目的とした証人尋問の呼出状の送達の受領を回避している。)、その後、右禁止命令に違反して、同趣旨の文書を複数回配付し、また、平成七年三月一六日にも同趣旨の仮処分命令が発せられたのに、この命令に従おうという意向を有していない点である。」

 

という特殊事情をあげ、

 

 

「一に認定した被告の不法行為の内容及びこれによって原口に生じた社会的評価の低下の程度を考えると、被告が本件文書を配付し、かつ、平成七年三月までの間にこれと同趣旨の文書を配付したことにより、被告が原告に対して支払うべき慰謝料の額は、三〇〇万円をもって相当と認める。」

 

としました。

 

 

ビラの配布という古典的な媒体に対して300万円の慰謝料は高額のような気がしますが、上記特殊事情があったことから、

 

 

上記判例は、

 

「裁判所の命ずるところに従って不法行為を差し控えようという意思が認められない被告に対しては、原告の請求により損害賠償を認容し、これによって不法行為の再発を防ぐほかない。」

 

 

などと指摘しており、これまでみてきた名誉毀損とは少し異なる事案といえます。

 

 

というわけで、本日も名誉毀損に関する判例のご紹介でございました。

 

今週も気合いを入れてがんばります。

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