慰謝料~名誉毀損④~

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弁護士の佐藤です。

 

 

あっという間の金曜日でございます。

 

 

さて、本日も名誉毀損が問題となった事案をご紹介していきたいのですが、本日は、前回ご紹介した判決の控訴審判決です。

 

 

東京高裁平成13年12月26日判決は、1000万円の慰謝料を認めた地裁判決に対し、

 

 

「本件記事は、被控訴人の体力がプロ野球選手とは考えられないほど劣っており、本来の厳しいトレーニングメニューには耐えられず、軽いトレーニングメニューを組んだが、被控訴人は平成一二年のシーズンに向けて再起をかけて取り組んでいるはずのところそのようなメニユーでさえも遊び半分の真剣味のない態度でしか取り組まず、トレーナーとの約束を破って飲酒・喫煙をし、あげくに二日に一度はストリップバーで派手に遊興を繰り返し、肉体改造という所期の目的は早々挫折したとの事実を被控訴人を愚弄する表現を用いて記者が直接見聞きしたかのように具体的、断定的に報道するものである。しかも、紙面中央に「やっぱり!“虎の穴”自主トレ・・が『金髪ストリップ通い』目撃」との大見出しを太字で配し、読者に被控訴人のプロとしての意識の欠如やファンの期待を裏切るような生活をシアトルで送っていることを強く印象つけるものである。そして 控訴人の発刊している週刊ポストは、著名な週刊誌でその発行部数も多くその掲載記事は多数の読者に読まれ、本件広告が主要全国紙である新聞三紙の全国版に掲載されたこととも相まって本件記事の内容は広い範囲に伝わったことが推認される。したがって、本件記事によって人気プロ野球選手である被控訴人の社会的評価が大きく低下し、被控訴人が被った有形、無形の損害は甚大なものであったことが推認できる。控訴人は、以上のように被控訴人の名誉を著しく毀損する本件記事を掲載するにつき被控訴人からの取材さえせず、控訴人が行ったという取材の内容もずさんなものであることは前記のとおりである。」

 

 

としながらも、

 

「一方、本件記事は主として被控訴人のシアトルにおけるトレーニングの内容や生活を報道するにとどまり、被控訴人のプロ野球選手としての資質以外の一般の社会生活における品性、名声、信用などの人格的な側面についての中傷、誹謗、非難等を多く含むものではない。また、被控訴人のプロ野球選手の資質に関わる部分もそれ自体として被控訴人の選手生命に直接関わるものとは考え難い。」

 

 

として、地裁判決を取り消し、600万円の限りで慰謝料を認めました。

 

さらに、東京高裁は、

 

 

「近年、社会構造の変化や技術の進歩に伴う情報の高度化(情報手段の多様化、伝播の広域化及び迅速化)、一部のマスコミによる行き過ぎた取材や報道などの事実もあって人格権や名誉権の社会的な評価が見直され、これまでの名誉や人格権侵害の損害賠償額が低額に過ぎるのではないかとの批判が多くされるようになってきていることは周知の事実である。」

 

としながらも、

 

「名誉毀損による精神的損害の程度を金銭に見積もってその額をいくらとみるかはきわめて個別的具体的な判断であって、当該事案に則したもので一般に納得をもって受け入れられるものでなければならないから、上記のような観点から慰藉料の額の基準についていわゆる見直しをするにしても、いろいろな考慮要素について均衡のとれた慎重な配慮をしなければならない。当面問題にされているいわゆる著名人(政界財界のしかるべき地位にある者、芸能人、プロのスポーツ選手、その他社会的に相当な地位にある者)に対しより高額な慰藉料を認めるべきかについての議論も、そのような特別な地位にあるわけではない一般の人の人権や人格が侵害された場合の評価の在り方の問題を考えるとさまざまであるべきで、これを一概に肯定することはできない。」

 

とし、

 

「一部の新聞や週刊誌による人権侵害にわたる私事暴露的記事は目に余るものがあり、これを抑止するには高額の慰藉料の支払を命ずるのが効果的であることは否めず、そのような社会的要請も一部にあると思われるが、解釈論としては限度があり、政策論としても、低俗なのぞき見的好奇心からこのような報道を受け入れる社会の民度ないし人権感覚を問題とすべきではないかとの視点もあり得るところであり、全面的に支持することはできない。」

 

 

として、600万円の理由につき、

 

「さきに示した判断は、被控訴人が最も高名なプロ野球選手の一人であって本件記事によりその評価が損なわれた程度が大きく、これを回復するにはそれに要する手段、時間、手間、費用等が多大なものになることに配慮した上で(このような配慮が妥当なものであるかについても議論はあろう。)、本件事案における具体的諸事情を勘案し、他の名誉毀損事例も参酌し、慰藉料として上記の額が相当であると認めたものである。この判断からすると原審の包容した一〇〇〇万円の慰藉料額は高額に過ぎ、六〇〇万円を超える部分は取消しを免れない。」

 

と結論づけております。

 

 

判示にあるように、名誉毀損事案のこれまでの慰謝料が低額であったことを認めつつも、最終的には、他の事案との均衡を図った判決といえます。

 

 

慰謝料とは、精神的損害に対する損害賠償をいい、主観的なものが大きく左右するところで、一概に妥当な金額を導き出すことが難しいものでありますが、他の事案との均衡という意味では、個人的には、高裁の判決の変更については理解できる面があります。

 

 

 

というわけで、長くなってしまいましたが、本日も名誉毀損に関する判例のご紹介でした。

 

 

雨が心配ですが皆様、よい週末を。

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