慰謝料~プライバシー侵害⑤~

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弁護士の佐藤です。

 

今週もはじまりました。

 

 

さて、本日もプライバシー侵害が問題となった慰謝料に関する判例をご紹介していきたいと思うのですが、本日の事案は、原告が、その個人情報を被告によって二フティ株式会社の運営するパソコン通信ネットワーク上の掲示板システムに掲載されて自己のプライバシーを侵害され、その結果、原告は数名の者から無言電話等の嫌がらせの電話を受けて、開業する眼科の診療を妨害され、また、信用を毀損され、被害を被ったと主張して、被告に対し不法行為に基づく損害賠償を請求したというものです。

 

 

この裁判で問題となった争点が、掲示板の掲示された情報については、原告は開業医であるから、自らが医者であることや、どの医師会に属しているかといったことは、原告の診療所において公開されているのが通常であるし、また、医師会ではそのような情報は電話でも簡単に応答してくれるのであって、これらは秘匿性のない情報であること、また、本件個人情報は、いずれも原告自ら電話帳に拡大広告して公開掲示しているものであって、原告の自宅の電話番号や生年月日、その他の原告が知られたくない私的な情報を含むものではないなどのことから、プライバシー侵害に当たらないのではないかという点でした。

 

 

この点に関し、神戸地裁平成11年6月23日判決は、上記争点に関し、

 

 

「原告は、自宅住所とは別の、本件掲示に記載された場所に眼科の診療所を解説している医師であり、その氏名、職業、診療所の住所及び電話番号は、NTT作成の地域別の職業別電話帳に広告掲載されている。したがって、右原告の氏名、職業、診療所の住所・電話番号は 原告の業務の内容からして当然に対外的に周知されることが予定されているものといえるから、必ずしも純粋な私生活上の事柄であるとはいい難い面がある。」

 

 

よしつつも、

 

「しかし、人の正当な業務の目的のために、その目的に係るものであることが明白な媒体ないし方法によって当該個人の情報が公開されている場合には、その個人情報は、右業務と関係づけて限定的に利用され、右業務とは関係のない目的のために利用される危険性は少ないものと考えられ、右公開者においては、そのように期待して、右公開に係る個人情報の伝搬を右目的に関わる範囲に制限しているものといえる。そして、右のように、個人の情報を一定の目的のために公開した者において、それが右目的外に悪用されないために、右個人情報を右公開目的と関係のない範囲まで知られたくないと欲することは決して不合理なことではなく、それもやはり保一されるべき利益であるというべきである。そして、このように自己に関する情報をコントロールすることは、プライバシーの権利の基本的属性として、これに含まれるものと解される。」

 

とし、さらに、

 

「原告の氏名、職業、診療所の住所・電話番号の右電話帳への掲載は、右電話帳作成の目的及びその掲載内容に照らし、原告においてその掲載に係る個人情報の伝搬の範囲を診療所営業に関わる範囲に制限しているものであるといえる。」

 

として、電話帳に載された原告の個人情報は、なお、私生活上の事柄としての側面も有するものと認められると判示しました。

 

 

そして、ネットの掲示板と電話帳については、

 

 

「ネット上の掲示板は、ニフティの会員でさえあれば誰でも見ることができるというもので、一定の情報を不特定多数の者に簡易迅速に伝達できるという性格を有し、そのようなネット上の掲示板の特殊な性格を考えれば、本件のような個人情報のネット上の掲示板における公開は、それを特に眼科医による診察を希望する目的など全くない多数の者にまで簡単に目にすることのできるようにするものであって、右電話帳に掲載される場合とは比較にならないほど大きな、悪戯電話や嫌がらせ被害発生の危険性をもたらすおそれがあるものと認められる。」

 

 

などとして、

 

 

「右原告の職業、診療所の住所・電話番号は、一般人の感受性を基準にして、原告の立場に立った場合、公開を欲しない事柄であり、かつ、一般人に未だ知られていない事柄に該当するというべきである。」

 

として、プライバシー侵害を認め、慰謝料としては、20万円の限りで認めました。

 

 

すでに電話帳で公表されている情報を掲示板で掲示した場合のプライバシー侵害を認めた珍しい判例といえますが、悪戯電話や嫌がらせ被害が実際に発生していたという点が大きかったのではないかと思います。

 

 

というわけで、本日もプライバシー侵害に関する慰謝料の判例をご紹介いたしました。

 

 

本日も気合いをいれてがんばります。

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