慰謝料~プライバシー侵害④~

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弁護士の佐藤です。

 

今週もあっという間の金曜日となりました。

 

 

さて、本日も前回同様、プライバシーの侵害が問題となった事案をご紹介したいと思うのですが、本日は、、原告が、自己の氏名、電話番号及び住所を電話帳に掲載しないよう求めたにもかかわらずこれを掲載されてプライバシーを侵害され、精神的損害を蒙ったと主張して、電話帳の発行・配布業務を行う被告に対し、人格権に基づき、原告の電話番号等の掲載された電話帳の配布先に当該電話帳の廃棄を求める広告の配布を請求するとともに、不法行為に基づき、慰謝料として300万円の支払を請求したという事案です。

 

 

この点に関し、東京地裁平成10年1月21日判決は、まず、氏名、電話番号、住所を公表されないという利益が法的に保護されるべきかどうかについての判断基準について、

 

 

「他人に知られたくない私的事柄をみだりに公表されないという利益(プライバシーの利益)は、他人がみだりに個人の私的事柄についての情報を取得することを許さず、また、他人が自己の知っている個人の私的事柄をみだりに第三者へ公表したり、利用することを許さず、もって人格的自律ないし私生活の平穏を維持するという利益の一つの内容として、法的保護の対象となるというべきであり、そのためには、公表された事柄が、①私生活上の事柄又は私生活上の事柄らしく受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準にして、当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、③一般の人に未だ知られていない事柄であることを必要とするものと解される。」

 

 

との基準をしめした上で、あてはめとして、まず①につき、

 

「個人の氏名、電話番号及び住所といった情報は、その私生活の本拠である住居に関するものであること、現代社会においては、このような情報が当該個人の了解する範囲外の者の目にさらされることによって私生活上の平穏が害されるおそれが増大しつつあること(公知の事実)、プライバシーの利益の保護が人格的自律ないし私生活上の平穏の維持をその主旨とすること、以上によれば、原告の氏名、電話番号及び住所は、私生活上の事柄である(前記①)ものというべきである。」

 

とし、②につき、

「原告が嫌がらせ電話などで悩んだ経験を有していること、原告が被告に対し自己の氏名、電話番号及び住所を電話帳に掲載しないよう事前に明示的に求めたこと、本件一の電話帳の掲載件数が掲載対象件数の半数にも満たないこと、以上の事情からすれば、本件における原告の氏名、電話番号及び住所は、一般人の感受性を基準にして、原告の立場に立った場合、公開を欲しない事柄である(前記②)といえる。」

 

とし、③につき、

 

「原告の氏名、電話番号及び住所は出身高校の同窓会名簿、所属学会の名簿及び東京都職員名簿に掲載されており、かつ、公的機関等に保有されているものと思われるが、これらのことは、本件一及び二の各電話帳の配布対象者らが配布当時(平成七年二月ころ)以前において原告の電話番号等を了知していたことを推認させるに足りるものではないから、原告の氏名、電話番号及び住所は、一般の人に未だ知られていない事柄である(前記③)ものというべきである。」

 

として、原告の氏名、電話番号及び住所は、法的に保護された利益としてのプライバシーに属するものというべきであるとしました。

 

 

そして、慰謝料については、

 

「原告の電話番号等の本件一及び二の各電話帳への掲載は原告の明示の意思に反したものであること、原告が幼い娘と二人暮らしをしている者であること、原告の氏名(女性の名前)の電話帳への掲載により、家庭に男性がいないことを不特定者に知られるのではないかとの不安を原告が抱く(甲第七号証)のも無理からぬことと思われ、他方で、平成八年二月ころ以降原告の私生活上の平穏が具体的に害されたとの事情は窺われないこと、被告に害意ないし故意は存しなかったこと、被告は平成七年三月当時原告の前夫の教え子にかかわる事情(前記一の1)を把握していなかったと思われること、前記一の3の(二)及び(三)のとおり、被告は原告に対し対応策を示し、かつ、相当な経費及び労力を掛けて一応の対策を講じたこと、平成九年三月ころ原告の電話番号等の記載が存しない新年度の電話帳が配布されていること、その他本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、被告が原告の蒙った精神的苦痛に対して支払うべき慰謝料額は一〇万円とするのが相当である。」

 

 

としました。

 

 

他方で、広告配布請求などその余の請求については、

 

「仮に原告の求める広告を配布したとしても、本件一及び二の各電話帳の廃棄は広告配布を受けた者の意思に委ねられるから、その実効性が必ずしも期待できないことなどの事情に照らせば、少なくとも本件において、人格権に基づく妨害排除請求として、被告に別紙二記載の広告の配布を求めることができるものとは解し難い。」

 

などを理由に棄却しております。

 

 

というわけで、本日もプライバシー侵害が問題となった判例をご紹介しました。

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