慰謝料~プライバシー侵害②~

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弁護士の佐藤です。

 

さて、本日も慰謝料に関する判例をご紹介していきたいと思うのですが、本日も前回同様プライバシー侵害に関するお話です。

 

 

まず、事案ですが、強盗殺人事件により死刑判決が確定した元警察官の死刑囚(原告)に対し、被告である出版社が、「獄中で公務員年金を受給する『元警官』死刑囚」という見出しで記事を掲載されたことで、原告は、プライバシーを侵害するものであるとして、原告が被告に対し不法行為に基づく損害賠償を請求したというものです。

 

 

これに対し、東京地裁平成6年9月5日判決は、まず、死刑囚という立場の者が、法的保護に値する利益を有するかにつき、

 

 

「原告は、前認定のとおり、現在、死刑確定者として拘置所に拘置中の身であるが、そのような法的地位にある者であっても、死刑判決に係る刑事事件と直接的又は間接的にかかわる事柄及び右の拘置関係に通常随伴する外部からも明らかなような事柄を除き、なお、その限度では私的生活領域を有するものというべきであり、したがって、そのような領域に属する事柄で、かつ、一般に知られておらず、一般人の感受性を基準として公表を欲しないと認められる事柄については、それをみだりに公表されないことにつき法的保護に値する利益を有するものというべきである。」

 

 

とした上、退職金等の公表について、

 

「原告が退職年金を月額約六万円受給しているという事実は、原告の私的生活領域に属する事柄であることは明らかというべきであるから、先に説示したところによれば、原告は、退職年金を受給している事実及びその受給金額について、それがみだりに公表されないことにつき法的保護に値する利益を有するものというべきである。」

 

 

としました。

 

 

他方で、本判決は、

 

 

「私的生活領域に属する事柄で、それが一般に知られておらず、かつ、一般人の感受性を基準として公表を欲しないと認められるような事柄であっても、当該個人の社会的活動の性質あるいはこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判あるいは評価の一資料として、それが公表されることを受忍しなければならない場合があると解されるほか、その性質上、それが社会一般の関心あるいは批判の対象となるべき事項にかかわるときは、その公表が許される場合があると解される。また、当該個人が選挙によって選出される公職にある者あるいはその候補者など、社会一般の正当な関心の対象になる公的立場にある人物である場合には、その者が公職にあることの適否などの判断の一資料としてそれが公表されたときは、これまた、その公表を受忍すべきものと解される。」

 

 

としがならも、

 

 

「原告が強盗殺人罪で死刑判決を受け、これが確定して拘置所に拘置中であることからすると、原告の右犯行当時における収入の源泉及びその収入金額は、犯行の動機等との関係で重要な犯情の一部を構成するものとして、その性質上、社会一般の関心あるいは批判の対象となるべき事項にかかわるものということができるが、本件記事が原告の収入の源泉及びその収入金額を取り上げているのは、そのような趣旨のものとしてではなく、単に、死刑囚としての原告が退職年金を受給しているという観点からであることは、本件記事の見出し及びその本文記事の内容から明らかである。」

 

 

などと指摘し、最終的に、

 

 

「原告は、被告が発行する週刊誌に本件記事が掲載された当時、退職年金を月額約六万円受給しているという事実を公表されないことにつき法的保護に値する利益を有していたところ、被告が本件記事において右事実を公表したことを正当とする理由はないといわなければならない。」

 

 

とし、100万円の請求に対し、10万円の限りで慰謝料を認めました。

 

 

なお、本件は、年金の受給等の公表とは別に、原告が、書籍購読料の公表もプライバシー侵害にあたると主張しましたが、本判決は、

 

「原告が書籍購読料として毎月平均二万円を支出しているという事実は、それ自体、社会的にみて、原告の人格的価値に対する評価を高めこそすれ、その低下を招くような性質のものとはいえず、一般人の感受性を基準とすると、それが公表を欲しないと認められるような事柄に当たるとは、にわかに認め難い。」

 

 

などとして、プライバシーの侵害を否定しております。

 

 

というわけで、本日もプライバシー侵害に関する慰謝料のお話でございました。

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