恐喝罪~債権者による取立~

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弁護士の佐藤です。

 

水曜日です。

 

1月から当事務所で研修をしている修習生も今週末で最後になります。

 

主任を引き受けるときはどうなるものか色々不安がありましたが、なんだかんだあっという間に時間が過ぎていきました。

色々がんばってやってくれました。少々寂しくはなりますが、残りの修習も充実したものになることを願っております。

 

さて、本日も刑法に関する判例のうち、本日は恐喝罪に関する判例をご紹介します。

 

前提として、恐喝罪ですが、刑法では、249条に規定があり、同法は、

 1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。  2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も前項と同様とする。

と規定しております。

恐喝罪でよく問題となるのは、実際に債権を持っている債権者が債務者に対して、金銭の支払の要求をする場合です。

 

本日ご紹介する事案は、被告人は被害者と協同して設立した会社を退くにあたり、会社に18万円を出資したと主張し、被害者がこれを争ったのですが、結局被害者より18万円の支払を受けることになり、その内金15万円の支払を受けたものの、Aが残金の支払をしないので、共犯者に取立を依頼し、共犯者は知り合いの者2名にこれを伝え、4人で共謀の上、被害者から残金を取り立て、金員を喝取しようと企てました。そして、被告人4名は、被害者に対し要求に応じない場合には、同人の身体に危害を加えるような態度を示し、被害者を畏怖せしめ、よって、被害者をして前記残金3万円を含む6万円を被害者に交付させたというものです。

 

つまり、被告人は、3万円を請求する権利を有していたところ、取立のために恐喝行為があった場合、恐喝罪が成立するのか、成立するとして、3万円の範囲なのか、6万円全体について成立するのかというのが争点です。

 

この点、最高裁判所昭和30年10月14日判決は、

 

「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に忍溶すべきものと認められる程度を超えない限り、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがあるものと解するを相当とする(昭和二六年(れ)二四八二号同二七年五月二〇日第三小法廷判決参照)。本件において、被告人等が所論債権取立のために執つた手段は、原判決の確定するところによれば、若し債務者Dにおいて被告人等の要求に応じないときは、同人の身体に危害を加えるような態度を示し、且同人に対し被告人A及び同B等は『俺達の顔を立てろ』等と申向けDをして若しその要求に応じない時は自己の身体に危害を加えられるかも知れないと畏怖せしめたというのであるから、もとより、権利行使の手段として社会通念上、一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱した手段であることは論なく、従つて、原判決が右の手段によりDをして金六万円を交付せしめた被告人等の行為に対し、被告人CのDに対する債権額のいかんにかかわらず、右金六万円の全額について恐喝罪の成立をみとめたのは正当であつて、所論を採用することはできない。被告人Bの弁護人・・・の上告趣意第二点第三点について。右は事実誤認量刑不当の主張であつて上告適法の理由とならない。被告人Cの弁護人・・・の上告趣意第二点について。所論は事実誤認の主張であつて上告適法の理由とならない。また記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。よつて同四一四条三九六条により主文のとおり判決する。この判決は、裁判官全員一致の意見である。」

 

として、6万円全体について恐喝罪の成立を認めております。

 

例え債権を有していても、その取り立て行為が社会通念から逸脱していた場合、恐喝罪が成立することは当然であり、3万円ではなく、6万円全体について恐喝罪の成立を認めた結果は妥当といえるでしょう。

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