強盗致傷罪の傷害の程度

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弁護士の佐藤です。

 

さて、本日も刑法に関する判例の中で、傷害罪に関する判例をご紹介しますが、刑法では傷害罪単独の罪名以外に傷害罪の成否が問題になるものとして、強盗致傷、強姦致傷等の他の罪名とセットになっているものがございます。

 

そこで、本日ご紹介する判例は、強盗致傷罪の傷害の程度は、傷害罪単独の罪名での傷害の程度と同じなのかということが問題となった判例です。

 

事案は、窃盗犯人が逮捕を免れる目的をもって自己を取り押さえた者に暴行を加え、通院加療約5日を要する傷害を与えたというものです。

 

この点、大阪地裁昭和54年6月21日判決は、

 

 

「強盗致傷罪における傷害の程度を検討してみるに、傷害罪と暴行罪の法定刑の下限はいずれも科料で同一であるのに対し、強盗致傷罪の法定刑の下限と強盗罪の法定刑の下限との間には傷害の有無によって懲役二年もの差があるうえ、強盗致傷罪においては例え財物奪取が未遂にとどまっても同罪の既遂の刑責を負い、未遂減軽の余地がなく、同罪の保護法益としては、人の生命、身体が格段に重視されていること、更に強盗致傷罪自体無期又は七年以上の懲役という極めて重い法定刑を規定していることからいっても、同罪における傷害は右重い法廷刑に値する類型性をもったものでなければならないこと、又強盗罪の構成要件要素たる暴行は、直接被害者の身体に加えられることを要し、かつその程度も暴行罪における暴行よりも強度な、被害者の反抗を抑圧する程度のものでなければならないと解されているが、このような有形力が行使された場合には、被害者の身体の一部に軽度の発赤や皮下出血あるいは腫脹等の痕跡が残るのがむしろ一般であり、このような軽微な生理的機能の障害は、右暴行に伴う当然の結果と言い得ること等から考え、強盗致傷罪における傷害の程度は、傷害罪におけるそれよりは強度の生理的機能の障害ないし健康状態の不良な変更を受けたことを要し、日常生活にほとんど支障をきたさず、強盗罪における暴行による不可避的な結果と認められる程度の僅かな創傷の類は、強盗致傷罪の傷害には該当しないと解するのが相当である。」

 

として、強盗致傷罪の傷害罪の程度に差をもうける判断をし、

 

最終的に

 

「右認定によれば、・・・の蒙った傷害の程度は極めて軽微なものであり、本件事後強盗罪の構成要件要素である暴行行為によって不可避的に発生する範囲内の生理的機能の障害にとどまるというべく、いまだ右の程度では強盗致傷罪の構成要件要素である傷害には該らないと考えるのが相当で本件の訴因は強盗致傷罪には該当しないと云わねばならない。」

とし、強盗致傷罪の成立を否定しました。

 

もっとも、別件で、昭和62年12月21日東京高等裁判所判決は、

 

 

「強盗致傷罪における傷害は傷害罪における傷害とは異なり、生活機能をある程度毀損するものであることを要するとするものもあるが、当裁判所は、強盗致傷罪と傷害罪における傷害の意義を別異に解釈しなければならない根拠はないと考える。 しかして、関係証拠によれば、被害者は、被告人による数回の手拳の殴打により、下唇の内側など外側から出血し胸には青あざが出来たこと、医者の診療を受けたところ口唇挫傷、右胸部打撲、挫傷で加療約一週間ないし一〇日間の診断であったこと、被害者は医者から貰った軟膏としっぷ薬をつけて治療をしたこと、胸の痛みや唇のけがで食事時にしみるなどして生活にも不自由を来たしたこと、右の痛みや傷跡は事件後五日間位残ったことが認められるのであり、これによれば、右の傷害強盗致傷罪における傷害にあたることは明らかであって仮りに所論の見解を持ったとしても強盗致傷罪における傷害として十分な程度のものであるということができる。従って、強盗致傷罪の成立を認めた原判決は相当で所論の誤りは存しない。論旨は理由がない。」

というものもあり、下級審レベルでは判断が分かれています。

 

弁護士からの目線だからかもしれませんが、やはり強盗致傷罪の法定刑は重く、大阪地裁の判断には同調いたします。

 

実務上も、強盗致傷罪で逮捕された事件で、起訴の段階では窃盗と傷害にかわっていることもあり、検察庁も一定の考慮をしていることもあるといえるでしょう。

 

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