尊属殺重罰規定

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弁護士の佐藤です。

 

どんよりした火曜日です。

 

さて、本日も憲法のお話しですが、本日は憲法14条に関する判例を。

 

憲法14条は、

 

  1. すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
  2. 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
  3. 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

と規定しています。いわゆる平等原則というものです。

 

で、憲法14条に関する判例は多くあるのですが、本日ご紹介する判例は尊属殺重罰規定意見判決というものです。

 

若い方も、もしかしたらそうでない方もご存じないかもしれませんが、昔の刑法は、尊属殺重罰規定というものがありまして、殺人罪の法定刑が死刑又は無期若しくは3年(当時、現在は5年)以上の懲役であったところ、尊属、つまり、祖父母・両親・おじ・おばなど親等上、父母と同列以上にある血族(尊属)を殺害した場合、法定刑は無期懲役または死刑と、非常に重い法定刑をかせられていました。

 

そして、この尊属殺を特別に扱うことが法の下の平等の原則に反しないか、社会身分による不合理な差別に当たらないかということで違憲性が争われたのが上記事件です。

 

現代の価値観ではありえないような規定ですが、昔は確かに存在し、古い判例ですが、昭和25年10月25日の最高裁判決は、憲法14条に反しないと判断しています。

 

これに対して、学説から非常に強い反対があり、その後、平成48年4月4日最高裁判決は、ついに、「刑法二〇〇条は、尊属殺を普通殺と区別してこれにつき別異の刑を規定している点ではいまだ不合理な差別的取扱いをするものとはいえないけれども、その法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限つている点において、立法目的達成のため必要な限度を遙かに超え、普通殺に関する刑法一九九条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法一四条一項に違反して無効であるとしなければならず」と判示し、違憲判決がでました。

 

もっとも、最高裁は、踏み込んだ判断まではしておらず、親の尊重という立法目的の合理性を認めた上で刑罰が厳しすぎるという点のみを違憲としたことには批判があり、刑法200条が封建的な旧家族制度的イデオロギーに立脚するもので民主主義的平等観と相いれない、親への報恩という道徳律を法律で強制することは不適当というような従来から言われていた批判には何ら触れなかったことは残念というか、最高裁らしいといえます。

 

いずれにしても、この違憲判決により、その後法律は改正され、刑法200条は削除されました。

 

 

以前、愛国心の問題でもありましたが、国に対する思い、親に対する思いというのは法律が規制、強要すべきことではないし、意味がないことで、日ごろの生活の積み重ねで自然と身につくものだと思います。

 

憲法の判例をみていると、今では考えられないものが過去には当たり前だったのだと、すこし恐怖にも似た感想をいだくばかりです。

 

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