安否を憂慮する者2

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弁護士の佐藤です。

 

今週もはじまりました。

 

さて、本日も刑法に関する判例のうち、誘拐罪についての判例をご紹介したいと思います。

前回もご紹介しましたが、刑法225条の2は、

  1. 近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
  2. 人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。

と規定し、安否を憂慮する者の要件をくわえ、法定刑を重くしているわけです。

 

そして、前回は、その安否を憂慮する者の該当性を否定した判例でしたが、今回は、肯定した判例をご紹介します。

 

事案は、金員に窮した被告人が、以前に預金返還請求に関して交渉したことのある相互銀行社長を人質にとり銀行幹部らからみのしろ金3億円を交付させようと企て、仲間3名と共謀のうえ、拳銃、実包、レンタカー、手錠等を用意して手筈をととのえ、出勤途上の社長を待ち伏せて略取し、車でホテルの1室に連れ込み、監禁して、社長に同銀行専務らに電話をかけさせ、みのしろ金を要求したが、結局警察に所在が判明し約37時間後に逮捕されたためみのしろ金の取得に至らなかったというものです。

 

そして、銀行幹部が安否を憂慮する者に当たるか否かが争われ、最高裁までいきました。

 

この点、昭和62年3月24日最高裁判所判決は、

 

 

「刑法二二五条の二にいう『近親其他被拐取者の安否を憂慮する者』には、単なる同情から被拐取者の安否を気づかうにすぎないとみられる第三者は含まれないが、被拐取者の近親でなくとも、被拐取者の安否を親身になつて憂慮するのが社会通念上当然とみられる特別な関係にある者はこれに含まれるものと解するのが相当である。本件のように、相互銀行の代表取締役社長が拐取された場合における同銀行幹部らは、被拐取者の安否を親身になつて憂慮するのが社会通念上当然とみられる特別な関係にある者に当たるというべきであるから、本件銀行の幹部らが同条にいう『近親其他被拐取者の安否を憂慮する者』に当たるとした原判断の結論は正当である。」

 

として、銀行幹部らを安否を憂慮する者にあたるとしました。

 

 

最高裁の判断基準が抽象的であり、前回紹介した判例が最高裁まで争われていたら、結論が異なった可能性は否定できません。

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