威力業務妨害罪

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弁護士の佐藤です。

 

さて、本日も刑法に関する判例のうち、業務妨害罪の成否が問題となった判例をご紹介します。

 

本日は、威力業務妨害罪の「威力」が問題となった事案です。

 

威力業務妨害罪の「威力」とは、「人の意思を制圧する勢力」(大判明43・2・3参照)、あるいは「他人の威勢、人数及び四囲の状勢よりみて、被害者の自由意思を制圧するに足りる犯人側の勢力」(最高2小判昭28・1・30参照)を指称するものとされ、「威力を用い」の意義については、「一定の行為の必然的結果として、人の意思を制圧するような勢力を用いれば足り、必ずしもこれが直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要しない」(最高1小判昭32・2・21参照)とされています。

 

そして、本日ご紹介する事例は、かつて夫との離婚交渉を依頼したことのある弁護士に恋慕の情を抱くに至つた被告人が、度々にわたつて交際を求めたにも拘らず同弁護士がこれに応じようとしなかつたところから、その態度に慎慨して、同人を困らせようと、事務所から退出しようとしていた同人から、訟廷日誌、訴訟記録等の在中する鞄を奪い取つて自宅に持ち帰り、2か月余の間自宅に隠匿し、同人の弁護土としての活動を困難にさせたというものです。

ここで何が問題となったかといいますと、被告人の行為は、威力を用いて業務を妨害した場合にあたらず、せいぜい「他人の業務に関して悪戯などでこれを妨害した者」として、軽犯罪法1条31号に触れるに過ぎないのではないかというものでした。

 

この点、昭和59年3月23日最高裁判所判決は、

「原判決の是認する第一審判決によれば、被告人は、弁護士である被害者の勤務する弁護士事務所において、同人が携行する訟廷日誌、訴訟記録等在中の鞄を奪い取り、これを二か月余りの間自宅に隠匿し、同人の弁護士活動を困難にさせたというのである。右のように、弁護士業務にとつて重要な書類が在中する鞄を奪取し隠匿する行為は、被害者の意思を制圧するに足りる勢力を用いたものということができるから、刑法二三四条にいう『威力ヲ用ヒ』た場合にあたり、被告人の本件所為につき、威力業務妨害罪が成立するとした第一審判決を是認した原判断は、正当である。」

として、威力業務妨害罪の成立を認めています。

 

威力業務妨害罪については、即成犯か継続犯かとうの学説の対立はあり、詳細に述べることは割愛しますが、荷物の奪取行為のみならず、隠匿行為に対しても威力業務妨害罪の威力といれるというような判示は、威力業務妨害罪が継続犯であるという立場にたっていると考えられます。

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