奈良県ため池条例事件

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弁護士の佐藤です。

 

あっという間に今週も金曜です。

 

さて、前回、財産権についての判例をご紹介しましたが、本日も財産権に関する最高裁判例をご紹介します。

 

本日は、奈良県ため池条例事件とよばれているもので、これも古い事件なのですが、1954年、県内に多数をため池をもつ奈良県では、ため池の破損、決壊当による災害を未然に防止するため、ため池の堤とうに農作物を植える行為等を禁止する条例を制定しました。

 

以前から堤とうを耕作していた被告人は、条例施工後も耕作と続けたため、条例違反で起訴されました。その刑事事件で、この財産権を規制する規定が違憲ではないかと争われたのが事案の内容です。

 

控訴審は、条例で財産権を制限することができないと判断しましたが、昭和38年6月26日最高裁判決は、

 

「本件ため池は、国または地方公共団体が自ら管理するものでないことが明らかであるから、本条例は、本件に関する限り、地方自治法二条三項一号の事務に関するものであり、また、ため池の破損、決かい令による災害の防止を目的としているから、同法二条三項八号の事務に関するものでもある(原判決が、本件に関し、本条例を同法二条三項二号の事務に関するものとし、これを前提として本条例の違憲、違法をいう点は、前提において誤つている。)。なお、本条例四条各号は、同条項所定の行為をすることを禁止するものであつて、直接には不作為を命ずる規定であるが、同条二号は、ため池の堤とうの使用に関し制限を加えているから、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者に対しては、その使用を殆んど全面的に禁止することとなり、同条項は、結局右財産上の権利に著しい制限を加えるものてあるといわなければならない。」

 

としながらも、

 

「その制限の内容たるや、立法者が科学的根拠に基づき、ため池の破損、決かいを招く原因となるものと判断した、ため池の堤とうに竹本若しくは農作物を植え、または建物その他の工作物(ため池の保全上必要な工作物を除く)を設置する行為を禁止することであり、そして、このような禁止規定の設けられた所以のものは、本条例一条にも示されているとおり、ため池の破損、決かい等による災害を未然に防止するにあると認められることは、すでに説示したとおりであつて、本条例四条二号の禁止規定は、堤とうを使用する財産上の権利を有する者であると否とを問わず、何人に対しても適用される。ただ、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は、本条例一条の示す目的のため、その財産権の行使を殆んど全面的に禁止されることになるが、それは災害を未然に防止するという社会生活上の已むを得ない必要から来ることであつて、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため、当然これを受忍しなければならない責務を負うというべきである。すなわち、ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであつて、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にあるものというべく、従つて、これらの行為を条例をもつて禁止、処罰しても憲法および法律に牴触またはこれを逸脱するものとはいえないし、また右条項に規定するような事項を、既に規定していると認むべき法令は存在していないのであるから、これを条例で定めたからといつて、違憲または違法の点は認められない。」

 

と、合憲の判断をしました。

 

この種の財産権に関する条例の効力について最高裁判所が判断を下したのは、本件が最初であるので、その意義は評価さるべきものでありますが、使用の全面的禁止という厳しい制限に対し、公共の福祉、及び、当然受忍しなければいけないという理由づけはもう少し具体性がほしいのではないかと、個人的には思います。

 

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