塩まきと暴行罪

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弁護士の佐藤です。

本日も刑法に関する判例を見ていきますが、本日は暴行罪に関する判例です。

暴行罪もなかなか色々な判例がございます。というのは、暴行罪というと、殴る蹴るを想像されるかたが多いと思いますが、暴行罪の定義は、人の身体に対する不法な有形力の行使といわれており、上記定義を前提とすると、殴る蹴る以外にも暴行が認められることになるのです。

 

そこで、本日ご紹介する判例は、会社側の立場に立つ従業員組合の組合員である被告人が、これと対立する労働組合に所属する女性の組合員(被害者)が職場に出勤したところを、他とともに取り囲んで、「帰れ。」などと怒号を浴びせるなどし、このため職場から出ようとする被害者に対し、その頭、顔、胸、大腿部などに食塩を数回ふりかけたという事案です。

つまり、塩を人に向かってまく行為が暴行といえるかが争いになりました。

この点、福岡高裁昭和46年10月11日判決は、被告人の行為につき、

「故意に、右塩壺内の食塩を右手につかんで数回ふりかけた(原判決は「投げつけ」と認定しているが、この点については確証がないので右のとおり「ふりかけ」と認定するのが相当である)。そして、これが、同女の頭、顔、胸、腕および大腿部にふりかかつた」

と事実認定した上、

暴行罪の成否については、

「形法第二〇八条の暴行は、人の身体に対する不法な有形力の行使をいうものであるが、右の有形力の行使は、所論のように、必ずしもその性質上傷害の結果発生に至ることを要するものではなく、相手方において受忍すべきいわれのない、単に不快嫌悪の情を催させる行為といえどもこれに該当するものと解すべきである。そこで、これを本件についてみるに、被告人の前記所為がその性質上・・・の身体を傷害するに至ることができるものか否かの判断はしばらく措き、通常このような所為がその相手方をして不快嫌悪の情を催させるに足りるものであることは社会通念上疑問の余地がないものと認められ、かつ同女において、これを受忍すべきいわれのないことは、原判示全事実および前段認定の事実に徴して明らかである。してみれば、被告人の本件所為が右の不法な有形力の行使に該当することはいうまでもない。」

と判示し、暴行罪の成立を認めました。

つまり、必ずしも、行為態様として、傷害の結果が生じる恐れのある行為を問題とするのではなく、相手方において受忍すべきいわれのない、単に不快嫌悪の情を催させる行為といえどもこれに該当するものと解すべきである、として、暴行罪の成立を認めたもので、結論としては妥当といえるでしょう。

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