同意と住居侵入罪

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弁護士の佐藤です。

 

さて、本日も刑法に関する判例のうち、住居侵入罪の成否が問題となった判例をご紹介いたします。

当然ですけど、家に入ることを許された場合、その人に住居侵入罪は成立しません。

しかし、例えば、夫婦がいて、一方の同意があり、一方の同意がない場合、住居侵入罪は成立するのでしょうか。

 

今回は、それが争点となった判例をご紹介しますが、事案は、夫が不在中に妻と情交を結ぶため、妻の承諾を得て、その住居に立ち入つたというもので、当然のことながら、夫の同意はなく、またあったであろうという状況でもありません。

この点に関し、昭和43年2月29日尼崎簡易裁判所判決は、

 

「ところで住居の立ち入りについて承諾をなしうる者は住居権者の夫であり、その住居権は一家の家長である夫が専有するものであるからその承諾を推測し得ない場合には承諾があつても効果がないものであり、自己の妻と姦通するために住居に立ち入ることを夫が認容する意思があるとは推測できないから姦通の目的で妻の承諾を得て住居に立ち入つた行為は住居侵入罪を構成するとするのが従来の判例の態度である。」

と従来の判例の態度をあげながらも、

「しかしながら、夫だけが住居権をもつということは男女の本質的平等を保障する日本国憲法の基本原理と矛旌ナるし、承諾の有無に住居侵入罪についての決定的意義を認め承諾の効果にかかずらうことは妥当でない。なるほど住居者の承諾を得て平穏に住 に立ち入る行為は侵入行為とはいえない。しかしその理由は住居侵入罪の保護法益が事実上の住居の平穏であるところから住居者の承諾があれば事実上の住居の平穏が害されないと考えられるからであつて、その重点は被害者の承諾の有無ではなく事実上の住居の平穏である。住居侵入罪の保護法益は『住居権』という法的な権利ではなく事実上の住居の平穏であるから夫の不在中に住居者である妻の承諾を得ておだやかにその住居に立ち入る行為は、たとい姦通の目的であつたとしても住居侵入罪が保護しようとする事実上の住居の平穏を害する態様での立ち入りとはいえないから住居侵入罪は成立しないと解するのが相当である。」

住居侵入罪の保護法益から考察し、最終的に、

「してみれば、夫〇〇が前記のように出稼中である昭和三九年七月中旬頃から同年一一月二○日頃までの間、その妻〇〇〇の承諾を得て同女宅へ立ち入り同家八畳の間で同女と合意のうえ約二五回にわたり肉体関係をなした被告人の前示所為は住居侵入罪を構成しないと解すべきである。」

とし、被告人を無罪としました。

 

道義的な問題はさておき、住居権者が夫のみというのは、やはり封建的な思考といわざるをえず、住居侵入罪の成否の結論としては妥当な判決といえます。

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