労働問題5~賃金について~

Tulips

弁護士の佐藤です。

本日も労働問題についてお話しますが、今回は、前回までの解雇等に関する問題の次に多い相談事例である、賃金に関するものです。今回は、一般論として簡単にお話します。

労働基準法上の賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対価として使用者が労働者に支払う全てのものをいいます(労働基準法11条)。つまり、①使用者が労働者に支払うものであること、②労働の対価であること、という2つの要件を満たせば、基本給の他にも、家族手当等の諸手当や賞与も賃金にあたります。また、退職金も、労働協約、就業規則等でそれを支給すること、支給基準が定められていて、使用者に支払義務があるものは賃金と認められます。

労働基準法上の賃金にあたる場合には、同法24条において、通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月1回以上、定期日払いの原則が定められています。

そして、賃金について問題となる事例で多いのは、残業代に関するものです。

まず、労働者が働く時間は、原則として1日に8時間、1週間で40時間以内と定められています(労働基準法32条)。これを超えて労働させるためには、職場の過半数労働組合代表か過半数従業員代表との労使協定を締結し(いわゆる36協定)、労働基準監督署に届け出ることが必要です(動労基準法36条)。残業とは、このように1日8時間、1週間40時間(法定労働時間)を超えた時間帯での労働をいいます(時間外労働)。

労働者が残業をした場合には、基本額の25%の割増賃金を請求できます(労働基準法37条)。これに加え、午後10時以降翌日午前5時までの労働(深夜労働)については基本額の25%の割増賃金を請求できますので(労働基準法37条)、残業が午後10時以降に及んだ場合には、割増率が50%となります。

また、残業とは別に法定休日に労働した場合(休日労働)には、基本額の35%の割増賃金を請求でき(労働基準法37条、政令)、これが深夜労働となる場合にはさらに25%の割増となり、割増率の合計は60%になります。

もっとも、労働者からの残業代の請求に対し、会社から、労働基準法37条に定める計算方法による残業代を支払う代わりに、定額の手当を支給する等の時間外労働等に対応する手当を支払っていたので、残業代を支払う義務はない等という反論をされることがあります。 この点、労働基準法が規制しているのは、同法37条に定める計算方法による一定額以上の時間外手当を支払うことですので、その規制に違反しない限りは、同条に定める時間外手当の計算をする必要はありません。したがって、上記のような会社の反論が認められることもあり得ます。

もっとも、定額の手当が時間外労働等に対応する手当に該当するかどうかが不明確な事例も多くみられ、これに該当しないと判断された場合には会社の反論は認められず、残業代の請求ができることになります。また、残業代を基本給に組み込んで支給していたとの反論については、判例上、基本給のうち割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意がされていること、労働基準法所定の計算方法による額がその額を上回るときは、差額を当該賃金の支払時期に支払うことが合意されていること、という2つの要件を充たす場合に限り、会社は定額の手当の支払いによって割増賃金の支払いを免れることになります(最高裁昭和63年7月14日判決参照)。

実際には、このような厳しい要件を充たす場合は少ないため、多くの事例において会社に対し残業代の支払いを命じる判断が下されています。

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