労働問題27~従業員の休業あけと安全配慮義務~

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弁護士の佐藤です。

さて、本日も安全配慮義務についてです。

会社で、従業員が病気等を理由に休業することは多々ありますが、従業員が復職した際、会社としては、どのような配慮を従業員にしなければいけないのでしょか。

 この点、判例は、病気休職中であった従業員が、復職の意思を表示しかつ現実に復職可能であるにもかかわらず、会社が、従業員を、休職期間満了による退職扱いとしたことが、就業規則、労働協約等に違反し無効であるとして、従業員が、会社に対し、従業員としての地位確認並びに未払い及び将来分の賃金の支払を求める事案で、「労働者が私傷病により休職となった以後に復職の意思を表尓した場合、使用者はその復職の可否を判断することになるが、労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合においては、休職前の業務について労務の提供が十分にはできないとしても、その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の実情、難易等を考慮して、配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検討し、これがある場合には、当該労働者に右配置可能な業務を指示すべきである。」とした上で、「原告が行うことのできない作業があるとしても、身体障害等によって、従前の業務に対する労務提供を十全にはできなくなった場合に、他の業務においても健常者と同じ密度と速度の労務提供を要求すれば労務提供が可能な業務はあり得なくなるのであって、雇用契約における信義則からすれば、使用者はその企業の規模や社員の配置、異動の可能性、職務分担、変更の可能性から能力に応じた職務を分担させる工夫をすべきであり、被告においても、例えば重量物の取り扱いを除外したり、仕事量によっては複数の人員を配置して共同して作業させ、また工具等の現実の搬出搬入は貸出を受ける者に担当させるなどが考えられ、被告の企業規模から見て、被告がこのような対応を取り得ない事情は窺えない。そうでれば、少なくとも工具室における業務について原告を配置することは可能であり、原告について配置可能な業務はないとする被告の右主張は採用できないところである。」(大阪地裁平成10年10月4日判決)としました。

 上記判例は、職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合ですが、では、従業員が職種や業務内容を特定して労働契約をしている場合はどうでしょうか。

 この点、判例は、「労働者がその職種を特定して雇用された場合において,その労働者が従前の業務を通常の程度に遂行することができなくなった場合には,原則として,労働契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供,すなわち特定された職種の職務に応じた労務の提供をすることはできない状況にあるものと解される。」(大阪高裁平成14年6月19日判決)としました。つまり、職種や業務内容が特定されている以上、それができない状態である場合には、労務の提供ができず、復職不能と判断されてもやむを得ないと考えられています。

 もっとも、上記判例は、「もっとも,他に現実に配置可能な部署ないし担当できる業務が存在し,会社の経営上もその業務を担当させることにそれほど問題がないときは,債務の本旨に従った履行の提供ができない状況にあるとはいえないものと考えられる。」とし、会社にはできるだけ、配置可能な部署が存在するか否かを検討するよう配慮しています。

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