労働問題22~安全配慮義務について①~

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弁護士の佐藤です。

これまでは、労災補償や労災保険についてお話ししてきました。

最初にお話したように、労災補償や労災保険は、労働者、遺族が被った損害を全て補償するものではありません。

そうすると、労働者はや遺族の方々は、補償してもらえなかった部分の損害についてはどうするかというと、使用者に対して、民法に基づく損害賠償請求をするしかありません。

この場合の法律構成としては、2通り考えられます。それは、不法行為責任という民法709条等に基づく損害賠償請求と、債務不履行責任という民法415条に基づく損害賠償請求です。

この二つはどう違うかと言いますと、簡単に2つ違いがあります。不法校責任の場合は、消滅時効つまり、時効により請求ができなくなる期間が3年であるのに対し、債務不履行責任では、消滅時効は10年です。

また、立証の点でも異なります。不法行為責任では、使用者などの帰責事由に立証責任は労働者側が負うことになりますが、債務不履行責任では、被告、つまり使用者側が追うことになります。

つまり、いずれの点においても、債務不履行責任の方が労働者側には有利なので、損害賠償請求をする場合には、債務不履行責任が主流といえるでしょう。

では、この債務不履行責任とは具体的にどういう責任でしょうか。

使用者側が負う債務不履行責任の内容は、「安全配慮義務」というものが確立されています。

この点、最高裁も、「雇傭契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つているものと解するのが相当である。」(昭和59年4月10日判決)としています。

また、立法においても、平成19年に制定された労働契約法5条で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」との規定を設け、使用者の安全配慮義務を立法上も明らかにしました。

次回以降、この安全配慮義務のさらに具体的な内容について、判例を参考にお話していきたいと思います。

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