労働問題20~業務起因性の事例について②~

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弁護士の佐藤です。

本日も前回につづき、労災保険のお話で、業務起因性が争われた事案を参考にお話したいと思います。

災害というのは何も業務中に起こるとは限りません。用便や飲水など、業務中断中に起こることも考えられます。

休憩など、業務中断中であれば、業務との関連はなく、業務起因性はないということになるのでしょうか?

この点、判例は、航行中の漁船の船員が休憩時間中につり便所の使用に際し、誤って海中に転落し死亡した事案で、「ところで、船員は、休憩時間中といえども、船内にあつて、船舶航行の安全と船内紀律維持のために、船長の指揮監督下に置かれているのであるから、船員の航行中における事故は、それが船員の私的行為によるものであつても、その原因が本来の職務の遂行に由来し、又は船舶の施設自体ないしはその管理の瑕疵等に起因しているものと認められる場合には、特段の事情のないかぎり、職務上の事故であるというべきである。」(東京地裁昭和46年9月39日判決)としました。

しかし、他方で、船員が飲酒の上縄台で睡眠中、海中に転落し死亡した事案で、判例は、「漁船が洋上にある場合には、たとい乗組員が操業(その準備、後始末その他の随伴行為も含む)に従事せず、いわゆる私的行為(操業中における休憩、操業終了後の娯楽等の自由行動、毎日の睡眠等)を行っている場合であっても、その行動範囲は船内に限定され、労働者(乗組員)はいわば船という使用者の事業施設そのものを利用している関係にあり、同時に使用者が支配している個々の船内施設を多かれ少なかれ利用せざるを得ない関係にあるものということができる。従って、単に乗組員の私的行為中に生じた災害(本件では死亡)であるというだけでこれを職務外のものとして保険給付の対称外とすることは相当でなく、私的行為のために利用した使用者の支配下にある施設との関連において右の意味における職務起因性の有無をさぐらなければならない。」としながらも、「各船員はベッド付個室が与えられ、睡眠のための専用施設が提供されているのであるから、使用者において縄台を前記認定のような用途のほか、睡眠施設として利用されることをも予定していなかったとしても、それは社会通念上許容し得るものであることは明らかである。」とし、さらに「本件事故当時、・・・が第一八万栄丸の船室又は後に認定するように睡眠場所としても利用が黙認されていた甲板、ブリッジ通路において寝たのであれば、前記争いのない気象状況からみて、同人のウイスキーによる酩酊状態を考慮に入れたとしても、同船から転落事故をおこすということは考えられないところである。現に、船員中には・・と共に同人以上の量のウイスキーを飲んだ者もいるのに、その者をも含めて当夜裕志以外に海中に転落した者はいないことは弁論の全趣旨より明らかなところである。従って、本件事故の原因は裕志が縄台上に寝ていたことに起因するものと推定せざるを得ないのである。即ち、船内施設(縄台)の予定外利用(睡眠)の事実がなければ(換言すれば、船室、甲板、ブリッジ通路で寝てさえいれば)、本件事故の発生はなかったものといい得る関係にあるのであるから、本件事故における職務起因性は否定するのが相当というべきである。」としました(東京地裁昭和53年3月30日判決)。

つまり、上記2つの判例では、休憩行為中の行為について、単純に業務起因性を否定するのではなく、私的行為と使用者の支配下にある施設との関連において、さらに具体的に、私的行為の具体的な内容、被災労働者の注意義務の程度等を考慮し、業務起因性の有無を検討しています。

 

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