労働問題19~業務起因性の事例について①~

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弁護士の佐藤です。

本日は、前回お話したように、業務起因性が争われた事例を紹介したいと思います。

業務起因性が争われる事例として、多いのは、就業中の喧嘩で、暴力を受けたというものです。

まず、建築現場において大工作業をしていた労働者が、訪れてきた同僚と仕事上のことで口論となり、同僚から殴打され死亡したという事案において、最高裁は、「Bと亡Aとの間の紛争はBが仮枠の梁の間隔が広すぎると指摘したことに端を発しているが、しかし本件災害自体は、亡Aが、Bに対しその感情を刺激するような言辞を述べ、更に同人の呼びかけに応じて県道上まで降りてきて嘲笑的態度をとり、同人の暴力を挑発したことによるものであつて、亡Aの右一連の行為は、全体としてみれば、その本来の業務に含まれるものといえないことはもちろん、それに通常随伴又は関連する行為ということもできず、また業務妨害者に対し退去を求めるために必要な行為と解することもできない。それゆえ、亡Aの死亡がその業務に起因したものということはできないのであつて、同人の死亡は「業務上死亡した場合」に当たらないとした原審の認定判断は、正当として是認することができる。」としました。

他方、建築現場においてレッカー車のクレーンを操作して、トラックの荷台から積荷の鉄骨を地上に降ろす作業に従事していた労働者が、当該作業に従事中の同僚からスパナで殴打され負傷した事案について、判例は、「控訴人の負傷は、鉄骨の積み降ろし作業につき、控訴人と中村との間の意思疎通を欠いたことに起因し、かつ、自己を正しいと信ずる控訴人は、中村の憤激の理由を聞きただし、これを解消しなければ、その作業の性質上、事後の作業を進めることができないわけであり、中村の控訴人に対する憤激は、いわばクレーンによる鉄骨の積み降ろし作業に内在する危険から生じたものと認められ、更に一連の事件は、たかだか数分程度以内のものと推認され、被控訴人の主張するように、争いが一旦おさまつた後、控訴人の私的挑発行為により生じたものとは認めることはできないから、控訴人の負傷には業務遂行性及び業務起因性があるものと解するのが相当である。」としました(東京高裁昭和60年3月25日判決)。

上記二つの判例を比較すると、いくら就業中に生じた災害であっても、それが本来の業務と関係ない私的行為から生じた場合等には、原則として業務起因性は否定されるといえるでしょう。

ただし、例外的に、本来の業務とは関係ない行為であっても、業務に随伴する必要ある行為といえる場合には、業務起因性は肯定されるということになると思います。

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