刑事事件4~保釈について~

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弁護士の佐藤です。

本日も刑事事件についてです。前回、勾留という身柄拘束に対する異議の手続についてお話ししましたが、本日は、身柄拘束解放に向けたもう一つの手続である保釈について簡単にご説明致します。

保釈とは、保証金の納付等を条件として、勾留の効力を残しながらその執行を停止し、被告人の身柄の拘束を解く制度をいいます。要は、もし逃げたり証拠を隠滅したりした場合には、予納させた保釈保証金を没収するという威嚇の下に、保釈保証金を積ませて身柄を一時的に開放する手続を保釈というのです。

本来は、刑事裁判が確定するまでは被疑者は犯人かどうか決まっていないという推定無罪の原則があるので、出来る限り身柄を拘束することは避けなければなりません。無実であるにもかかわらず身柄を拘束され、その間家にも帰れず会社にも行けなくては、一般社会生活が送れないばかりか、会社を解雇されたりという大きな不利益を被る危険もあるからです。これは仮に罪を認めていたとしても同じことです。そこで、裁判にきちんと出頭するための保証を確保し、身柄を一旦開放する制度として保釈制度があるのです。

保釈には大きく分けて3つの種類の保釈があると規定されています。「権利保釈」(刑事訴訟法89条)と「裁量保釈」(刑事訴訟法90条)、そして「義務的保釈」(刑事訴訟法91条)です。義務的保釈というのはほとんどお目にかからないものですので実務上は権利保釈と裁量保釈の2つが問題になるといえます。

 権利保釈とは、必要的保釈とも言われるように、保釈の請求があったときには、裁判所は法廷の除外事由が無い限りは保釈を許可しなければならない種類の保釈のことを言います。除外事由、つまり、これらの事由があるときには保釈を許可しなくてもいいという要件としては、①重い刑罰が科せられる特定の犯罪(死刑・無期懲役、短期が1年以上の懲役刑(禁錮刑)に課せられる犯罪を犯した場合、②被告人が以前に一定範囲の重大な罪の有罪判決(死刑・無期懲役または10年以上の懲役刑(禁錮刑)を受けていた場合、③常習犯的なケース、④証拠を隠滅すると疑われる相当の理由があるとき、または目撃証人や被害者にお礼参りなどをするような危険がある場合、⑤氏名や住所が不明な場合(刑事訴訟法89条)となっています。これらの事由がない場合には、裁判所は保釈を「許さなければならない」とされているのです。

次に、裁量保釈とは、権利保釈における許可の除外事由が有る場合でも、裁判所が保釈許可を適当と認めるときに行われるものをいいます。例えば形式的には常習犯的犯罪を犯した場合であっても(刑訴89条3号の除外事由)、被告人の経歴や性格、社会的地位、家庭状況、職場環境などを総合的に判断して、裁判所が保釈を認めることがあるのです。

 もっとも、保釈というのは、権利保釈(必要的保釈)が大原則になっているので、請求すれば原則的に保釈を許可しなければならないのですが、実際には保釈が認められる割合というのはかなり低いものです。とても原則として保釈を許可するという法の建前が維持されているとは思われません。明確な根拠があるわけでもないのに「罪証隠滅の恐れ有り」の一言で保釈を許可しないでいい、という裁判所の感覚があるようです。さらに、被告人が否認、つまり、罪を認めていない場合は、保釈が認められることはほとんどないと言っていいでしょう。

ところで、保釈を許可する場合には、裁判所は保釈の条件を付けるのですが、これらの条件を遵守せずに裁判所に出廷しなかったり、どこかに逃亡してしまった場合には、保釈保証金を没収することとなります(刑事訴訟法96条2項)。被告人としては、保証金を没収されては経済的に困るので、きちんと裁判所に出廷するようにするのです。このような畏怖効果を背景に保釈制度が成り立っていると言えるのです。

因みに、保釈保証金の額ですが、統計を調べたわけではありませんが、私の経験上では、100万円から200万円くらいが多いといえます。

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